澤井:視聴者層を意識されたんですね。

宮本:マニアックな内容は深夜にやればいいんですよ。それこそ野球好きのおっさんが仕事終わりに酒飲みながら観るみたいな感じでね。もちろんズムサタでも前日の試合結果を伝えていましたが、そこまで詳しい解説はやらなかった。家族で観ててもちょうど良い温度感にするには、『野球選手の好物は何か』とか、『休日には何をしているのか』など、プライベートなことを聞くのがいいんですよ。

澤井:めっちゃ勉強になります! たしかに巨人の選手に取材するコーナーでは、結構やわらかい会話が多かった印象があります。

「女子野球の人口は増加中」

宮本:多かったどころか、21年間で巨人の選手とはほぼ野球の話題はしていないんですよ(笑)。坂本勇人は「おでんの具なら何が好き」とか、岡本和真は「何味のラーメンが好き」かとかを聞いたり。そこから親子の会話が弾んでくれたらと思ってました。

澤井:子どもたちは、そうした話題の方が気になる子も多いですよね。

宮本:あと僕が情報発信者として意識していたのは、テレビを観て外に出かけて欲しいということ。例えば、テレビで巨人の選手に取材して、それを観た親子が球場に足を運んでくれたらこの上なく嬉しいですよね。経済も回るし良いことづくめ。これから少年野球の練習に行く子供が気持ちよく出かけてくれたらなと思い、明るくポジティブな気持ちにさせようと心がけていました。

澤井僕が小さいころの2000年頃は、ゴールデンの時間帯で巨人戦の中継が当たり前のように放映されてたんですけど、それがいつしか少なくなっちゃって……。結構さみしい気持ちもあるんですけど、宮本さんはどう思いますか?

宮本:たしかに今は、ジャイアンツでも地上波でやるのが年間20試合ぐらいだよね。でもそれは仕方ないことというか、時代の問題だと割り切ってる。もうテレビ以外でもYouTubeとかサブスクで好きなものがいくらでも観れる世の中だから。そういった意味では野球に限らず、視聴率を確保するのも難しい時代ですよね。

澤井:そういう意味では野球を扱ったYouTubeチャンネルも増えましたよね。

宮本:そうですね。それはもちろん良い事なんだけど、その専門チャンネルにどう子供たちを持っていくかが重要だと思うんですよ。

澤井:ですよね。いまは男子の野球人口って減っているとも聞きますし。

宮本:そう。まあそれはひとえに少子化が進んでいるのも一因だけど、それだけじゃないんだよね。例えば、バットやグローブを揃えるのに初期投資がかかるとか、あとせっかく野球を始めたんだけど監督が怖くて嫌になっちゃうとか、周りに野球をやっている子が少ないから自然と離れてしまうとか。

澤井:結構、複雑ですね。僕らの頃は校庭とかで当たり前のように野球をやっていましたけど、今の子供はまた環境が違うから難しいですよね。

宮本:まあでも悲観しているわけじゃないんですよ。現に女子野球の人口が増え続けているのってご存知ですか?

澤井:え、そうなんですか!? 男子は減っているのに?

宮本:3月の終わりから高校生の女子のセンバツが始まるんですけど、近年で出場チームは増えているんですよ。去年が過去最多の38校、今年はそれを超える45校がが出場します。しかも春は1年生が入ってきていないので、夏のセンバツになるともっと増えてくる。いま女子野球はアツいんですよ。

澤井知らなかったです! しかも宮本さんは去年『読売ジャイアンツ女子チーム』を立ち上げられて、初代監督を務めていらっしゃるんですよね?

宮本:そうなんです。男女かかわらず野球の競技人口を増やそうと、女子の力を借りてなんとかしようと一念発起しました!