夫は波乱万丈さんが34歳のとき末期の肺がんで、つらい闘病の末に他界。
娘は10歳、息子は8歳だった。シングルマザーとして働き始めるが指定難病を患い、数年間、まともに働くことができなくなってしまう。
初孫の誕生が転機に
「この期間は、夫が残してくれた貯蓄を切り崩さざるを得ませんでした。遺族年金は出ていましたが、自営業でしたので子どもが18歳になるまでしか受け取れないという条件つきでしたし、教育費が何かと入り用で、やむなく借金も……。正直言って、とても年金保険料を払えるような状況ではありませんでした」
そんな夫が残した家を手放しつつも、娘と息子は立派に育ち、ともに結婚もした。波乱万丈さんは、知り合いが安く提供してくれている借家で1人、余生を過ごすことに。 最初はお金がなくともつつましく暮らせばよいと考えていたが、初孫が生まれたことが大きな転機となった。孫になにかをねだられたら? 助けてほしいと言われたときに1円も渡せなかったら……?
そこで踏み出した一歩が、「75歳までに720万円の貯金を作る」という目標の設定とYouTubeだったのだ。そして、気取ることなく赤裸々に、等身大の自分のエピソードを公開し始めた波乱万丈さんだったが、思った以上の反響に、心底驚いたという。
「まさか、ここまでたくさんの方に見ていただけるとは正直思っていなくて……。それに、視聴者の方々が、コメント欄を通じて、いろいろ教えてくださったのも、とてもありがたいことでした。例えば、健康保険料の減税申請のこと、受け取りそびれていた遺族年金のこと、寡婦年金のことなどです。ちゃんと手続きをすれば、今からでもいくらか受け取れるはずですよ、と。
それで、皆さんからいただいたアドバイスをもとに、実際に動いてみることにしたんです。その経過も動画で共有しながら。そうしたら、時間や手間はすごくかかりましたけど、最終的に、けっこうまとまった額を受け取ることができたんです」
また、65歳になったときには、3つのアルバイトのうち、主な収入源だったスーパーを、年齢のために辞めざるを得なくなった。そのときも、YouTubeの視聴者に助けられたという。かつて縫製の仕事で使っていたミシンで、気分転換にエコバッグを作る動画を配信したところ、視聴者から、「そのバッグを買いたい。販売用に作ってほしい」という要望が寄せられたのだ。
「これも、本当にありがたいことでした。それで今は、少量ずつですが、セミオーダーでエコバッグを作って販売するという仕事も、ネット上で始めました」
遺族年金、寡婦年金、エコバッグの売り上げ、そしてYouTubeの収入……。これらを貯金にまわすことで、波乱万丈さんの貯金額は、確実に目標に近づいてきているという。一昨年末には30万円だったものが、現在、貯金は401万円になったと3月16日にアップした動画で報告している。波乱万丈さんをほっとけない!という声が、彼女の人生を好転させたのだ。
「本当に、YouTubeを始めてよかったなと思っています。視聴者さんは、私にとっては宝物です。一体、何を皆さんにお返しすることができるのか──。せめて、おかげさまで元気にやっております、とお伝えできればとは思っているんですが……」