いずれは『とちあいか』生産も
「私のところでは『とちおとめ』の生産が8割くらいで、残りの2割は『ミルキーベリー』と『スカイベリー』です。今後の生産予定としては、しばらくは現状維持ですね。すべてネットショップでの直売で、お客様には品種の食べ比べをして楽しんでもらいたい思いがあり、いずれは『とちあいか』も作ってみたい気持ちはあります。ただ、親苗を育てたり、ハウスを分けたりといった細かい作業を考えると、ちょっと今すぐは手が回らないですね」
6年前からいちご生産をゼロから始めた小林さん。『とちぎ農業女子プロジェクト』にも参加し、3人の子どもを育てながら、いちご農園をひとりで切り盛りしている。
「同じような悩みを持つ農業女子の皆さんとつながれたのは支えになっていますね。夫はお米の専業農家なので、収穫の時期にはお手伝いをしてくれますが、基本はひとりで収穫からパック詰め、出荷までやっています。最近はいい出会いがあり、子どもの同級生のママでお手伝いしてくれる方もできました。本当に周りや家族に助けられながら、なんとか続けている状況ですね。子どもたちとの時間を大事にしたいという思いもあるので、今の自分に手が届く範囲内で今後も続けたいです」
栃木県真岡市で『猪野さんちのいちご農園』を経営している、株式会社雄の猪野麻美さんは次のように話す。
「ウチの農園の栽培面積としては、『とちおとめ』が3000平方メートルほどで、JAにも出荷し、市場流通しています。『とちあいか』は昨年苗の申請をして、今年から実際に育て始めました。希少種の『とちひめ』や『ミルキーベリー』と合わせて500平方メートルほどで作っています。今後どの品種を栽培するかは、特に県から指定されるわけではなく、各生産者が個別に考えていくことになります。『とちおとめ』が明日からすぐ消えてなくなってしまうわけではないので、安心していただきたいですね」
麻美さんは、以前は保育士として働いており、4年ほど前から母の思いを引き継ぐかたちで就農。現在は同社のいちご部門を母の正子さんとともに支えている。実際に育ててみて、新品種の『とちあいか』は栽培しやすいという。
「苗を作る時点ですでにほかの品種に比べても強いなと思いました。同じ環境で育てていても『とちおとめ』より花のつき方も元気で、虫もつきづらいように感じます。大粒で形も安定していて、収穫して次の実ができるまでの展開も早い。“あいかは優秀でいい子だね~”なんて言いながら収穫しています(笑)」
同農園のある真岡市は県内の生産量トップを誇る「いちごの王国の首都」だ。母の正子さんは、真岡市のいちご生産の歴史をこう振り返る。
「ここ真岡市・二宮地区でいちご栽培が始まったのは、昭和29年ごろ。小麦に代わるいい作物を模索するなかで、麻美さんのおじいさんに当たる方が農協の方々と足利市のいちご栽培を一生懸命学んで帰り、この地で広めていきました。当時はいちごを“グミ”と呼んでいたようですね」
二宮地区は二宮尊徳(二宮金次郎)のゆかりの地。その教えに従い、「いいものはみんなで共有し、盛り上げよう」という思いが強いそうだ。