坂野さんは自分が見た光景から、死亡した岡田さんが置かれていた状況が容易に想像できたという。
「ららとコウタにも食事制限をしていて、たまに腐った味噌汁を与えるくらい。それでもお腹が空いているから食べるんですけど、それを見てあーちゃんが“人間じゃないな”と言うんです。コウタはまだしも、ららは女の子だし、かわいそうになって。あーちゃんに“やめたれや”と言ったんです。そこから態度が急変して“私はヤクザの娘や、おまえの家族もろとも潰したる”って脅されるようになりました。さらに蒼斗を泣かせたとイチャモンをつけられるようになって、知らない強面の男が出入りするようになって自分も殴られたりするようになったんです」
成人男性であれば、身長150センチ弱の小林被告に負けるとは思えないが、坂野さんは「恐怖しかなかった」と当時を振り返る。
「あの場にいたら確実に死んでいた」
「実在するヤクザの名前を使って脅してくる。妙にリアルだから信じてしまったんですね。こっちも実際知らない男に殴られて頭がボーッとしてるし、日中もGPSをつけられてすべて監視のもとにあり、逃げられないと思いつめてしまった。また、実家も知られているし家族に危害が及ぶのが怖かった」
坂野さんはあとから同居してきた謎の男と小林被告に暴行を振るわれるようになり、小林被告の実子のららとコウタと同じ立場になる。
「ご飯を食べさせてもらえず、あーちゃんたちが出かけた隙に落ちていたスナック菓子を食べたり。それが見つかると木刀でボコられる。“臭い”“汚い”と言われるんですけど風呂に入ったら怒られるし、でも目を盗んで1週間に1回程度シャワーを浴びるとそれがバレてまたボコられる。火で熱した鉄の棒を押し付けられて火傷が膿んでしまっていて、その傷口から悪臭がするんです。でも正直、この頃の記憶はあまりないです。今でも似たアパートを見ると恐怖で足がすくみますね」
坂野さんは2ヶ月程度で脱走することができたというが、
「あのままあの場にいたら確実に死んでいた」
と振り返る。