全国にチェーン店を持つコンビニは

 実際、世の中の動きとして“名札問題”の対策はどうなっているのだろうか? 日本全国に店舗を持つ、大手コンビニ3社に聞いてみると──。

「名札が原因でネットでの被害やストーキングされたという事案はございません。ただ、本名を出すことが不安だという声も一部あり、他社の事例なども参考にしながら社内で検討をしております」(ローソン広報)

「現時点で(名札についての)運用の変更予定はございません。さまざまなご意見も含め、今後の参考にさせていただきます」(ファミリーマート広報)

ファミリーマート
ファミリーマート

「名札については名字のみを表記しております。また、小売店や飲食店を中心とした市場環境などを鑑み、2022年7月上旬ごろから順次、顔写真がついていない名札に変更しております」(セブン-イレブン広報)

セブンイレブン
セブンイレブン

 と、検討はしているものの、名札の廃止までには至っていない様子。店員からも実際にストーキングなどの被害に遭ったという声は届いていないという。しかし、飲食店以外の動きとして高橋弁護士は、自身の経験をこう語る。

「先日、役所に用があって行きましたが、所員は名札をつけていませんでした。あと、最近では警察官も自分の名前を口頭では言いますが、警察手帳を見せたり、名刺を渡すことをしなくなりましたね。

 こちらから聞いて、名乗るかどうかは相手側の判断になっているのだと思います。必要に応じて担当者の名前を伝えるというスタンスになっているのが、時流なのかもしれません。今、“モンスタークレーマー”が多いですから、自身の名前が悪用されることを防止しているのだと思います」

 また“名札レス”の動きは、教育現場にも広がっている。

「学校に通う子どもたちから、名札がなくなりましたね。小学校に通う子どもたちを見ても学校で使う道具、ランドセルにも名前を書いていない人のほうが多いと感じます」(高橋弁護士)

ランドセルに名前や住所を書き込むことが当たり前だった時代は遠い昔に
ランドセルに名前や住所を書き込むことが当たり前だった時代は遠い昔に

 実は、名札着用の見直しのきっかけとなった事件がある。'14年に埼玉県で、当時13歳の少女が傘に書かれていた名前を読み取られ、面識のない男に誘拐され、約2年間監禁されたのだ。