食事内容や生活習慣の改善が予防に
“認知症は遺伝するのか”という点も、多くの人が気になるテーマ。三木先生は、認知症の中で最も多い「アルツハイマー型認知症」の発症に、遺伝的な要因が関与している場合があるという。
「発症に影響があると考えられている遺伝的な要因の1つに、アポリポタンパクE(APOE)があります。
このAPOEはε(イプシロン)2、ε3、ε4という3つの型に分かれていて、その中でε4を持っている人はアルツハイマー型認知症を発症する確率が高く、特に女性は発症リスクが10倍になるといわれています」
とはいえ、決して悲観することはない。物忘れ外来の受診者の多くは、初期症状が現れたときに家族が症状に気がつき、早めに受診を促しているケースが多いそう。
「初期の段階で受診をすれば、その後、症状が表面化したときに、治療やサポートをすぐに受けられます。今後、どういった経過をたどりやすいか、という予想もつきます。周囲の人が少しでも“おかしい”と思ったら、早めに受診することが大事です」
また、今までの生活習慣を見直すことも予防につながると、三木先生は語る。
「最近の現象として、コロナ禍で趣味の活動に参加しなくなったり、予定を早めて早期退職をした受診者が増えています。
社会活動への参加が減ったことがきっかけで、物忘れが現れたり、認知症が進行したケースが多くなっている印象を持っています」
社会活動に積極的に参加することが、認知症の発症を遅らせるとの研究データも出ている。
特に高齢男性は、孤立しがちなので会社を退職したら地域活動への参加や、趣味を生かした分野の活動を意識的に行うことが大切だ。
食事内容については、研究結果から、ビタミンB1とB12が、女性の認知症と関わりがあることがわかった。
「ビタミンB1とB12を含む食品を食事に積極的に取り入れることをおすすめします」
アルツハイマーになりやすい人が判明!
アルツハイマー型認知症の発症に影響を及ぼす遺伝子の「アポリポタンパクE」。このタンパク質には3つの型があり、誰もが両親から1つずつ受け継いで2つ持っている。
そのうち「ε3」を持つ人を標準とすると、「ε4」を持つ人は認知症を発症しやすい傾向がある