傷痕を見て、驚愕した。
「でも、縫い目をよく見たら、本当に丁寧に縫ってあったんです。思わず『先生、パッチワークキルトやりませんか』って(笑)。でも二度目なら、ショックも少ないだろうなんてとんでもないわ。顔だし、怖いし、気持ちも沈みます。ただ、私は“がんには負けられない”。その気持ちは人一倍強いと思います」
なぜなら、長女の“死”が、常に頭にあるからだ。
家族は「一番身近なドクター」
キャシーさんは長女を若くして肺がんで亡くした。
「まだ29歳でした。タバコも吸わない七奈美に、そんな“まさか”が起こったのです。娘は必死に生きようとしていた。“がんに勝つことはできないかもしれないけれど、負けないでいられればいい”と、そんな思いで、彼女もすごく頑張ったし、私たちも全力で彼女を支え続けました。結果として娘は逝ってしまったけれど、私たち家族は、がんとの向き合い方を彼女から学びました。だから私も、二度の皮膚がんに“負けるものか”と、前向きになれたんだと思います」
生身の身体は、何が起こるかわからない。何が起きても不思議ではないとキャシーさんは言う。そして、がんを患った家族がいると、互いの身体を気遣う意識は、高くなると思うとも。
「うちの家族は誰かがちょっと変な咳をすると、すぐに病院に行くようにすすめるの。お互いをよく見てるんですよ。勝野が席から立ち上がるときに、いつものような勢いがないなとか、歩くときに足を引きずっているなとか、気になれば『どこか調子が悪いの?』と聞きます。逆に彼のほうからも『今日、起きるときにだるそうだったけど、大丈夫?』と聞いてくることもあります。家族はいちばん近くでお互いを見守っている専属のドクターやナースみたいな存在なんですよ」
こうして、意識を高くもっていたために、早期発見につながった今回の皮膚がんだが、タレントでもあるキャシーさんにとって、再び顔にメスを入れるのに、どんな葛藤があったのか。
「子どもを産んだ後は、モデル時代と比べると身体はずいぶん大きくなったわ(笑)。それで体形を揶揄されたこともあったし、『あんなにキレイだったのに』とも言われました。でも、“今の私が、私なんだから”とずっと思ってきたし、人の言うことは気にならないの。涙が出たのは、皆さんにわかってもらえると思うけど、両親からもらった自分の顔が、一体どうなってしまうのかという不安が大きかったから」