基本的なコミュニケーションにまつわる先輩たちの悩みも多い。「挨拶しない」「返事をしない」といった意見のほか、
「ひとつの業務が終わったらボーッとしていて、こちらから声をかけなければ次の仕事に着手しない。何かあると口頭ではなくすべてメールで報告してくる」(41歳・事務職・女性)
と、指示待ち型の新人に対する苦言も。
“給料に見合う以上の仕事はする必要がない”
「明るく見えても本質的には内向的というのも、Z世代の特徴のひとつ。SNSなどでの発信は得意でも、オフラインでのやりとりが極端に苦手という人も増えています。また、非常に合理主義的で“給料に見合う以上の仕事はする必要がない”というドライな考えを持つ人も。
自分の能力を客観視する力があるので、実力や必要以上のことに手を出さない慎重さが指示待ちにつながってしまうこともありえます。いずれにせよ、先輩のほうから意識的にコミュニケーションをとっていく配慮は大事ですね」(衣輪さん)
その他のエピソードの中には、かわいらしい“プチモンスター”の目撃談も。
「手書きの書類がギャル文字でまったく読めず、さすがに怒るよりも笑ってしまいました」(38歳・製造業・男性)
「新人に手洗い洗車を頼んだところ、手のひらを濡らしてじかに洗剤をつけて手で車を洗い始めたので、スポンジを使うところから指導した」(41歳・ガソリンスタンド勤務・男性)
といった意見には新人ならではの愛らしさも。
「経験不足ゆえの失敗は、世代を問わず誰しもが通る道。傷つきたくないというZ世代の新人たちも多いと思いますが、多少の無理や失敗をすることも大事だよと伝えていきたいですね」(衣輪さん)
多くの優秀な新人の陰に隠れて、ふいに現れるモンスター新人。対処法を考えておくことも必要なのかもしれない。
衣輪晋一(きぬわ・しんいち) メディア研究家。雑誌『TVガイド』やニュースサイト「ORICON NEWS」など多くのメディアで執筆するほか、制作会社でのドラマ企画アドバイザーなど幅広く活動中
取材・文/吉信 武