性犯罪が起こる可能性は高い

 このようなトイレはどのような危険が潜んでいるのだろうか。犯罪心理学などに詳しい立正大学の小宮信夫教授に聞いてみた。

性犯罪が起こる可能性は、非常に高いと思います。男女の利用者同士が接触できる構造なので、連れ込むことは容易い。そのほか、男女共用の個室では盗撮なども起こりやすいですし、カメラを設置した個室の隣室からライブ配信を行うこともできてしまうでしょう」

 トイレの立地も犯罪が起こる要因になるという。

「このオールジェンダートイレがある階には、お酒を飲める飲食店が多くありますよね。これも非常に危険です。なぜなら、性犯罪の事件は半分以上が当事者たちにお酒が入った状態で行われているんです。シラフでは大丈夫でも、酔っているとうっかり手が出てしまう。個室に連れ込むまでは行かずとも、痴漢などは起こりやすいでしょう」(小宮教授、以下同)

 SOSボタンの設置や警備員の巡回に効果はあるのか。

「抑止力は低いと思います。警備員が常駐できれば話は別ですが、それは難しいでしょう。SOSボタンも基本的には“何か起こってしまった”ときに使うものなので、未然に犯罪を防ぐことができるとは言い難いですね」

 まずは利用の導線などを踏まえて、構造的に安全性を高めていくのが重要だそうだ。

 SDGsの浸透などもあり、このようなトイレは増えていくと思われるが……。

「オールジェンダートイレは海外でも作られるようになりましたが、あくまでも“ファッション”という一時的な現象だと言えるでしょう。最優先するべきは、安全ということを再認識した国では揺り戻しが起こっています。イギリスではトラブルが多発したこともあって、女性専用トイレの設置が必要だと政府が宣言しました」

 トイレは安全が第一で、オシャレは二の次にしたほうがよさそうだ。