“値上げをしない”がいちばんの差別化
《定時退社決めてからのサイゼで豪遊が日課になりつつある》
《久しぶりにぼっちサイゼで豪遊キめたけど1,500円で腹パンなのめちゃくちゃヤバい》
《サイゼで豪遊しようと思ったのに安すぎて2人で3kちょいしかいかなかった》
(以上、Twitterより)
ちょい足しとなる“味変”メニューも少なくない。この春のメニュー改定では「オリーブアンチョビペースト」(100円)がメニューに登場。数百円のメニューを1品、追加で注文するよりもさらに注文の心理的ハードルは低い。これも客単価アップにつながるだろう。
また、その“イメージ”も大きい。サイゼリヤは昨年7月に発表された公益財団法人日本生産性本部のサービス産業生産性協議会による調査で、飲食部門において“顧客満足度”で1位に。トップ獲得は2年連続と利用客から高い評価を得ている。
「LINEが昨年行った“好きなファミリーレストラン”という調査でもサイゼリヤが1位となっています。全体では2割弱、10代女性で見ると4割ほどと、他と比較するとダントツといえる評価となっていました。これは“頑張って低価格を維持している”という姿勢によって、ファンに愛されているのではないでしょうか。応援したいという気持ちにもなるでしょう」
デニーズなど、もともとの価格がサイゼリヤより高く設定されていたファミリーレストランも多い。そのようなサイゼリヤと比較して“高価格帯”の同業チェーンから客が流入した結果とも考えられるのだろうか?
「決算の数字を見ると、サイゼリヤの来客数は回復傾向にはありますが、コロナ禍の前より増えているわけではない。やはり1人あたりの注文数が増えていることが客単価が上がっている要因でしょう。値段が安いので頼みやすく、他チェーンと比較して、より“お得感”を感じられて財布の紐も緩みやすい。
財布の紐の固い人はたとえばラーメンのトッピング1つとっても絶対追加はしないでしょう。しかし、そこまで財布の紐が固くない人は“玉子が安い。じゃあトッピングしようかな”となりますし、それがサイゼリヤでいえば、ワインやビールが安いから頼もうかなとなる。そういった人の取り込みで客単価が伸びているのだと思います」
ほかのファミリーレストランチェーンとサイゼリヤの“違い”は――。
「大きくはやはり“値上げをしない”という姿勢がいちばんの差別化であり、戦略だと思います。またサイゼリヤのメニューには幅がありますが、ベースはイタリアンです。ファミリーレストランではなく、イタリアンと考えたとき、他にもイタリアンのチェーンはありますが、比較すると”サイゼリヤの方が断然安い”となります。エスカルゴであったり割と本格的なものも食べられ、安いというのは強い」
その安さから“サイゼしか勝たん”状態のサイゼリヤ。信頼できる庶民の味方ではあるが、“豪遊できるのはサイゼリヤ”というのは、今の日本社会・経済における庶民の悲しき現状とも言えるかもしれない……。