現金を手に持って使ってみてお金の管理を学ぶことも大切
海外の事例を見ると、日本よりさらに急速にキャッシュレス社会は広がっている。
「各国のキャッシュレス決済比率を見ると、韓国では93.6%、中国は83.0%と、日本より大幅にキャッシュレス化が進んでいる国は多くあります。もちろん統計方法が異なるので数字だけでは比較できませんが、私が住んでいるシンガポールでもキャッシュレス決済はかなり普及しています。
旧正月には紅包(ホンパオ)というお年玉を渡す風習があるのですが、近年は「e―紅包」という“キャッシュレスお年玉”が推奨されるほどで、決済方法にも文化の違いがあり、おもしろいですね」
日本でも現金を取り巻く環境は少しずつ変化している。2021年からは新500円硬貨が流通し、2024年の上半期には新紙幣も発行される。
一方、特に自販機や駐車場の精算機などでは新500円玉や1万円札などの高額紙幣に未対応のものもいまだにある。キャッシュレス決済の利便性はこれまで以上に高まりそうだ。
「もちろん旧紙幣が一切使えなくなるということはないですが、この機会に現金からキャッシュレスへという流れはさらに加速するのではないかと思います。お金の扱い方に慣れていない子どもにとっては、実際に現金を手に持って使ってみてお金の管理を学ぶことはとても大切です。
ただ、キャッシュレス化が進む現代においては、キャッシュレス決済の使い方に慣れておくというのもマネーリテラシーのひとつ。大人にも子どもにも重要になっていくと思います」
来年には1万円札、5千円札、千円札の顔がそれぞれ渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎にかわる。キャッシュレス決済の導入も含め、お金のリテラシーを改めて考えるいい機会になりそうだ。
取材・文/吉信 武
花輪陽子 外資系投資銀行を経てファイナンシャル・プランナーとして独立。2015年よりシンガポール在住。『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』(講談社+α新書)など著作多数