登録者数20万人超えの朝のルーティン
漫才コンビ時代からねづっちがネタを書いていたが、そのネタ作りの才をさらに磨き上げることに役立ったのが、コンビ解散直後に始めたYouTube『ねづっちチャンネル』だった。登録者数は20万人を超える。
「昨年8月にYouTubeショートを始めたら会員数が伸び始めて、3万人ぐらいで推移していた登録者数が、一気にはね上がりました」(前出・関口社長)
ねづっちは毎日、動画を投稿する。8年半、続けているという。動画を撮ることが、朝のルーティンになっている。
「朝7時ぐらいに起きて、スマホでヤフーニュースを読んで、そこから漫談を考えます。社長も3つ、4つネタになりそうなニュースを毎日送ってくれます。ご飯を食べながら考えて、10時ぐらいにうちの奥さんにスマホで撮ってもらって、それをメールで制作会社に送ってYouTubeに上げてもらいます。8年半、毎日やっています。Tシャツにジャケットを着て、撮影場所はリビングです」
日々のニュースから生み出される、日々のネタ。それをその日のうちに、客前で披露できることが今、ねづっちの強みになっている。
コンビ解散後の'16年。1人になったねづっちは、もっと場数を踏みたいと考え、その思いを『ナイツ』の塙に伝えた。『ナイツ』は、『笑点』の司会を務める春風亭昇太(63)が率いる公益社団法人『落語芸術協会』の協会員で、テレビ・ラジオ出演の合間を縫い、都内の寄席に出演している。塙は「芸協に聞いてみますよ」と橋渡しを約束した。客前でこそ輝くねづっちの芸を、塙は理解していたからだ。
「生活のまん真ん中で、舞台で何かやりたいという脳みそしかないから、あの人の場合。何かしゃべっていても、それネタになるね、って、そういう人。僕もそうだから、よくわかる。一番お笑いが好きで、すぐにでもお客さんの前で言いたいと思うのは同じ」
塙の提案を、落語芸術協会は理事会で諮った。
「謎かけは噺家と(芸風が)カブるんじゃないの、と心配する声はありました。最初は代演で出てもらって徐々になじんでもらって、それを見た席亭(寄席の経営者)がねづっちを認めて、2019年に正会員になってもらいました」
当時を知る同協会の田澤祐一事務局長(62)はそう振り返り、
「寄席の番組で大喜利を組むことがありますが、引っ張りだこのレギュラーですよ。いい看板になりつつあると思います」と、戦力としてのねづっちに注目する。
大喜利の司会を務めることが多い、同協会理事の桂竹丸(66)は、
「困ったときのねづっち」と全幅の信頼を寄せる。
「大喜利はアドリブで、出たとこ勝負なんですよ。経験の浅い二ツ目は、どうしても答えが出てこないときがある、そんなとき、流れが止まらないように頼るのがねづっちです。ねづっちがいないときは心細い」
もともと寄席との親和性は高い謎かけ。客にウケないはずはない。