若返り6:脳トレを日課にして脳を甘やかさない
無理のない範囲で続ける8つの脳トレ
最後は認知症予防に欠かせない脳のトレーニング。その方法にもコツがある。
「認知症には『アルツハイマー型』や『レビー小体型』『血管型』などの種類があり、それぞれ低下する認知機能にも多少の違いがあり、対策も異なります。
健康な人であれば、下の表にある『近時記憶』や『遂行力』など8つの認知機能をまんべんなく鍛えると、さまざまな認知症リスクの回避につながります。認知機能を刺激するこれらの知的活動を、1人、または集団で行うものをそれぞれ紹介します」
ただし、毎日8つすべての認知機能を鍛えようと気合を入れすぎると三日坊主で終わることも。1日1~2種類にとどめるのがベター。
「下の知的活動の中から、月曜は迷路、火曜は勉強と折り紙など、生活のサイクルに取り入れるといいですね。ある患者さんは、認知機能が低下して、お孫さんとのギクシャクした関係に悩んでいました。
しかし、知的活動に取り組むようになると、お孫さんも一緒にゲームをするようになりコミュニケーションが取れるようになったそう」
家族や友人を巻き込んで楽しく行えるものを選ぶのがおすすめだ。
認知症リスクを上げるも下げるも自分次第
浦上先生は、これまで35年以上、多くの患者と接しながら認知症予防の研究を進めてきた。なかには、認知症対策が奏功し、脳の機能を回復した人も少なくない。
「当初『MCI』と診断された人が、適切な治療と対策を行った結果、正常な認知機能に戻ったり、MCIの状態を10年以上キープしている人もいます。治療を通して“認知症は防げる病だ”という意識はさらに強くなりましたね」
さまざまなメディアで認知症の予防を呼びかけている浦上先生は今、“若年世代”にも目を向けている。
「私が危惧しているのは、デジタルツールの進化による若い世代の認知機能の低下。ツールと上手に付き合えれば問題ありませんが、思い出せない事柄をすぐにスマホで調べていると記憶力が衰え、イヤホンで常に音楽を聴いていると難聴の原因にもなります。
あくまで私の予測ですが、このままデジタルに頼り切りの生活をしていると、認知症の発症が早まるかもしれません。『認知症は高齢者の病気』と思わず、若い人も予防に目を向けてほしいです」
【取材・文/大貫未来(清談社)】