チョコだけを食べて30時間続けて作業も
工房で三井さんは、レゴ ブロックに命を吹き込む。その日常に、ルーティンワーク的なものはまったくない。
「眠くなったら寝ます。1日合計、8時間以上は寝ていると思いますよ。目覚ましもかけずに、自然に起きるときに起きる。不規則です。健康的じゃないですね」と笑うが、理由は明確で「作業をするうえで眠気を我慢しながらやるのは効率がよくないし、いいものも作れないですから」
眠気は大敵。酒も飲まない。
「お酒を飲むと、その日一日が終わった感じがしちゃう。夜中に急に、無性に作りたいと思うことがあり、実際に作業しています。作りたい、と思ったときに作れるような状態でいたいので飲みませんね」というこだわりからだ。
必ずしもというわけではないが、並行的に3作品ほどを同時に手がけるのが三井さんの流儀である。
「作品によって、淡々と作る作品もあれば、一気に仕上げる作品もある。細かい仕事もあれば体力仕事もある。その時々のテンションに合わせて3つぐらい同時にやるのが、混乱というよりはむしろ気分転換になる。理想的です」
仕事のとっかかりから納品までは「だいたい3~4か月」というのが制作スパン。「街のジオラマの発注を受けて、完成まで半年かかったことがあります。幅10メートル、奥行き1・5メートルぐらいでした」という手ごわい作品もこなしてきた。
LCPだからといって、ずっと何かを作っているわけではない。
「事務作業だったり取材対応だったり、ブロックに触れない日は意外に結構あったりします。1か月のうち前半は触らないけど、後半は触るという月もあります。ブロックをいじらないと落ち着かないということはないですね、常に忘れることはないので」としながらも、職業病的な感覚にはしょっちゅう見舞われる。
「ものを見ると、ブロックでどう作れるかなと考えている自分がいます。街を歩いていても必ず考えちゃいますね。映画を見るときもワンシーンごとのカット割りの構図を意識して見ていたり、何をしてもレゴに結びつきます」
眠くなったら眠るという創作パターンも、締め切り間近になると様子が一変する。
「締め切り前、30時間ぶっ続けでやったことが、何回かありますよ。丸1日以上、チョコレートだけを食べながら。コツコツやり続ける忍耐力は、レゴビルダーには必要だと思います。体力仕事なので、肉はよく食べますね」
寝食を忘れて、一心不乱にレゴ ブロックを積み上げる三井さんは、大きなヘッドホンで耳をふさぐ。流れているのはヘビーメタルのナンバーだ。
「キルスウィッチ・エンゲイジやアマランスといった海外のバンドをよく聴きます。リズムよく組むことが多いので、私の場合はヘビメタを聴きながらがノレますね」