息抜きの時間は息子とのレゴ ブロック
審査をしながら番組全体を見守る三井さんは「次のレゴ好きをつくるのは、大きな仕事。下の世代が育つことはワクワクします」と番組に参加できることを手放しで喜び、「すごい才能の子がいます。私が5、6年前にワークショップで教えていた子が成長して出ていました。私の子どものころとは比べられないくらいの成長速度で、私が大学生のときに作っていたレベルのものを小学生ぐらいで作っている」と脱帽する。
すべては、三井淳平さんというロールモデルがあるからこそ。三井さんが切り開いた道があるから、そこに新たな花が咲く。
1歳のときに、3歳上の兄と一緒に遊んだファーストレゴ体験。中学時代には自力でホームページを開設し、レゴ作品を発信した。私立灘高校時代には『TVチャンピオン』(テレビ東京系)の「第2回レゴブロック王選手権」に出場し準優勝。進学した東大では先輩らと5人でレゴ部を立ち上げ、大学祭で発表した「安田講堂」が大学当局に購入されるという栄誉に。レゴ ブロックを通した社会貢献が評価され、大学院修士時代に東京大学総長賞を受賞した。
大学のレゴ部はその後全国20校近くに広がり、母校・灘高LEGO同好会は30人近い熱心な会員を数える人気同好会に成長した。道なき道にレゴの種をまき続けている三井さんという生き方が、各地でレゴ製品のフラワーブーケのように色づいている。
目下、息抜きの時間は、4歳と2歳の息子と、一緒にレゴ ブロックに触れる時間。
「まだ触り始めて間もないですけど、うれしいですね。自分自身も1歳ぐらいから触っていたので」
と、笑顔を見せた三井さんは、「運のよさもあり、結果的にコンスタントにやるべきことをやってきただけ」とこれまでを謙遜するが、高みを目指す姿勢も崩さない。
「アートのジャンルは、ライフワークとして今後、本格的に手をつけたいと思っています。新作だけの個展をやることも、どこかのタイミングで考えたい。あとは、時間の使い方次第だと思います」
みんなを楽しませたい、ただ驚かせたい。三井さんは今日も、レゴ ブロックに命を吹き込んでいく─。
<取材・文/渡邉寧久>
わたなべ・ねいきゅう 演芸評論家・エンタメライター。文化庁芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。ビートたけしが名誉顧問の「江戸まちたいとう芸楽祭」(台東区主催)の実行委員長。東京新聞、デイリースポーツ、夕刊フジなどにコラム連載中。