若い世代が増えて、そこで新たなビジネスを起こすなどすれば、地域も活性化する。
「その成功事例として知られるのが、島根県海士(あま)町。松江から60km先の海に浮かぶ離島で人口減少に悩んでいましたが、島の名産物を使ってのビジネスを行政が支援。
その結果、特産品のサザエを使ったレトルトカレーがヒットして話題となり、その後も多くの若い世代が移住して新たなビジネスを始めています。この試みで、課題であった人口減少や高齢化にも歯止めがかかりました」
海士町は風光明媚(めいび)ではあるものの、有名な観光地があるわけではない。にもかかわらず、Iターン移住者で人口の10%以上も占めるほどに。
「『ここに来ればチャレンジできる』と若い世代がやりがいを感じられる環境を整えたことが成功した理由。
また人が人を呼ぶところがあって、若い仲間がいることで移住へのハードルはますます低くなります。海士町がこの施策で注目されたのは10年以上前ですが、その勢いは今も続いていますね」
若い世代に関心を持ってもらうには、SNSの活用も鍵に。
「首都圏でPRする際によく使うのが駅広告。このとき、SNSで広めてもらうことを想定して、通行量が多く写真が撮りやすい電車内などではない場所に集中して広告を出すことがあります。目につきやすいし、SNSで広めてもらいやすくなると」
もちろん告知を見た人が「面白い」と感じることも必要不可欠。
「食のキャンペーンでは『カニバーサリー』などのダジャレが多用されますが、これはちょっとバカバカしいほうがウケるから。私自身もネーミングを考えますが、これはダサいかも!?と振り切ったもののほうがウケることはよくあります」
キャンペーンの成功において重要なことは、“地域感情”にどれだけ寄り添えられるかだという。
鳥取県のカニのように、もともとあるもので、地元の誰もが“名産”と認めるものならベストだが、一部でしか知られていない珍しいものや、注目を集めるために、目新しいものを打ち出そうとしても難しいという。
「一時期、ウケを狙っての自虐的なプロモーションが流行ったことがありました。しかしそのやり方は地元の方の感情を損ねることもあり、うまくいかないケースがほとんど。その地域ごとで思惑の違いはある。
いかに寄り添い、地元の人がどれだけ賛同してくれるかが成功の秘訣になると感じています」
今後も地方発の食のキャンペーンは増えていきそう?
「ネーミングやPR方法を少し変えるだけで従来あったものが売れるようになるなど、地方にはクリエイティブな工夫で変われる余地がまだまだあります。
また私自身、動画を作成したらものすごく喜んでもらえたなど、それまで得られなかった手応えを実感できたので、クリエイターにとっても地方はやりがいを感じられる場所のはず」
おまけに海士町のように、地方から面白いことをやろうとしている若者も増えている。
「日本において、こうした地域を活性化する流れは一時的なブームに終わらず、定番化していくのではないかと思います」
(取材・文/中西美紀)