ランニング初心者は疲れたら止まってストレッチもOK

 誰でも気軽に始められるランニング。夏場でも、朝夕の涼しい時間には、多くのランナーが街を走っている。だが、有酸素運動ほど、健康リスクを理解して取り組むべきだという。

「ランニングなどで身体を動かしている最中は、心臓が血液を全身に送り出す一方で、筋肉の収縮や弛緩(しかん)により全身から血液が心臓に戻り、血液がバランスよく循環しています。

 注意すべきは、信号待ちで足を止める、疲れを感じて立ち止まってストレッチするなど“急に足を止めた”とき。全身から血液は戻らなくなる一方で、心臓は血液を送り出すことを急にはやめず、最悪の場合は、心停止の事態を招くこともあるのです」

 では、日々の有酸素運動はどんなことに気をつければいいのか。

「信号待ちの際はその場で足踏みをし、ストレッチをしたい場合は少しずつ速度を落として徐々に心拍数を下げてから行うよう心がけましょう」

健康にも美容にも股関節は柔らかいほどいい

「下半身ダイエットに効果的」「冷え性が治る」などの口コミで、開脚ストレッチがブームだが……。

「そもそも股関節は、前後に大きく動くことはあっても、左右にはさほど開かないんです。開脚できなくても、健康上も美容上も一切問題ありません」

 元来、開かないようにできている股関節を無理やり伸ばし続けていると、やがて関節がゆるくなる。関節周囲の炎症が起こるだけでなく、身体全体のバランスまで悪くなってしまうというから恐ろしい。

「股関節に限らないことですが、ストレッチをしているときに痛みを感じたら、伸ばしすぎのサインです。ケガをしないためにも効果を高めるためにも、痛みを感じる手前でストップするのが重要です」

運動して大量に汗をかけば脂肪燃焼しやすい

 汗をたくさんかけば、代謝も上がってダイエットの効果もアップしそうに思えるが、汗の量と、脂肪がどれくらい燃焼するかは一切関係ないという。

「汗は、運動によって体温が上昇すると出るもの。一方で脂肪は、筋肉がエネルギーを消費した結果、燃焼されます。これらは、同じタイミングで起きているだけで、メカニズムとしてはまったく別のものです」

 そもそも運動によるエネルギー消費量は「運動の強度×運動した時間」。例えば、ランニングをする場合、汗をかくためにサウナスーツを着込んで10分走るよりも、涼しい格好で30分走ったほうが、エネルギー消費量は3倍多いということになる。

「むしろ今のような夏場は、大量の汗をかこうとする行為自体、自ら熱中症を招いているようなものなので、避けるべきです」

一日1万歩のウォーキングで健康長寿

「目標は一日1万歩」とよく言われるが、そもそも1万歩という数字に根拠はあるのだろうか。

「目標の歩数をわかりやすく設定するためのもので、1万歩という数字自体にちゃんとした根拠はないと思います。

 本来、運動で重視すべきなのは、まず“質”です。ウォーキングでいえば、いかに正しいフォームで歩くかということこそが最も大事で、何歩歩くかは二の次なんです」

 間違ったフォームで1万歩歩き続ければ、やがて膝やアキレス腱を痛めてしまうことに。

「身体に負担のかからないウォーキングならば、短い距離でも効果を得られますし、結果として歩ける距離も延びていきます。ケガなく、効率的に運動を続けるため、まずは右のイラストを参考に正しい歩き方を学びましょう」

歩く時の正しいフォーム(イラスト/伊藤和人)
歩く時の正しいフォーム(イラスト/伊藤和人)
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