実家の処分でもっとも揉める問題はこれ
「実家じまいは、処分の方法、時期、条件の3つを話し合うことが第一歩になります」
方法とは大きく分けると、実家を売るか貸すかの選択。時期とはその選択を実行するときを指し、条件とはいくらで売るか、リフォームにいくらかけるかなどを意味する。
「3つの中で一番ハードルが高いのが時期です。兄弟姉妹が多いと大抵意見は合わないもの。例えば『管理が大変だから、近所に迷惑をかける前に処分しよう』と一人が言えば、『おまえは薄情だな』『親が死んだらすぐ金にするのか!』などと反論する人が出てくるわけです。
思い出の詰まった実家だからこそ揉めやすく、まとまらないまま時間がどんどん過ぎていくのはよくあるパターンですね」
すると前述した空き家放置の状態になり、管理の手間や金銭的負担を強いられてしまう。どうすればいい?
「私たちは先にスケジュールを組むようアドバイスします。いつまでにどうするか、決断のゴールを早めに設定するということです。目安は1年。1年以上になると、どうしても腰が重くなります。
遺品の整理は可能なら半年をめどとする。そうすれば盆か暮れかに兄弟姉妹で集まって片づけを行いつつ、実家じまいの話し合いができるでしょう。なお遺品整理は罪悪感を覚えやすく、作業の遅れにつながることも少なくありません。
ですから自分たちである程度やったら、あとは業者に任せたほうが精神的にも体力的にも楽ですよという助言をよくしています」
売却を選ぶ人が9割!賃貸NOの理由は
では、処分の方法はどうか。上田さんが代表理事を務めるNPO法人 空家・空地管理センターの例でいうと、戸建てを前提とし、最終的に相談者の9割以上が売却を決断するそうだ。
「思い入れが強い実家を手放したくなくて賃貸を検討する方もいます。都市部や地方問わず、比較的広い地域でニーズはあるはず。しかし、人に貸す場合はリフォームを必要とし、通常数百万円の費用がかかる。
投じた資金を家賃収入で回収するのに長い期間を要し、賃貸経営にはリスクも。そういった現実を知ると、賃貸ではなく売却の判断をする方が圧倒的に多いのです」
売却では不動産会社に買い取ってもらうのがセオリー。実家所有者を売主とした際に生じる手間や、金銭負担を不動産会社が担い、平均3か月以内の早さで売却成立に至るとか。
「ただし不動産会社も商売ですから、どんな物件でも買い取り対象とするわけではありません。売却しやすい都市部地域のものを基本とし、エリアが地方の田舎になるほど対象外とされてしまいます」