高齢出産での治療で悩まされるお金の問題

 現状ではこの着床前診断はいくつかの条件が適用されるので、誰でも受けられる検査ではない。また、保険適用外のため、数十万円がかかる自費治療検査となってしまう。

 高齢出産に当てはまる年齢からの不妊治療は、お金でかなり悩まされると小松さんは振り返る。2022年から不妊治療保険適用になり、以前より補助金や助成金の制度も整ってきた。ただし、こういった補助を受ける年齢は43歳までと範囲が決まっており、小松さんのような高齢出産の場合は保険適用外。自己負担額はかなりの額にのぼる。

「私の場合は、毎年新車を買えるくらいの金額が出ていきました。正直、治療を継続するかどうかを、お金の問題で諦める人もいると思います。ほかにも年齢や周囲の目を気にして治療を断念することもあると思いますが、後悔する可能性が少しでもあるなら、続けてほしいと思います」

 不妊治療は試行錯誤の連続で、結果的に妊娠できない可能性もある。先が見えないつらさがあるので、自分が納得できるゴールを見つけておくことが大切だと話す小松さん。

 第1子を無事に出産した今は、不妊治療には多額の費用がかかったが、その価値があったと日々感じているそう。

「今こうやってわが子と出会えて彼女の微笑みを見ていると、すべての苦労が吹き飛ぶくらい報われたと感じます。子育てがこんなに幸せでこんなに楽しいなんて、想像もしていませんでした。若いうちは自分でもやりたいことがたくさんあって、こんなふうに感じることは無理だったんじゃないかな。

 4人5人とたくさん産みたかったという思いはもちろんあります。でも、とにかく全力でやりきったので。もし子どものいない人生だったとしても、きっと何も後悔はしていなかったと思います。それくらい、人生の中でも一番全力で取り組んだ不妊治療でした」

 現在は2歳半の娘さんと保護猫18匹(!)、そして治療に伴走してくれた夫と一緒に、忙しくも充実した日々を送る小松さんは、輝くような笑顔でそう語った。

小松みゆき●女優・タレント。1971年生まれ。大学生の時に水着グラビアでデビュー後、女優としてもテレビ、映画、舞台で活動をスタート。主な作品にフジテレビドラマ『大奥 最終章』『闇の歯車』、映画『僕が君の耳になる』などがある。2020年2月、7年間の不妊治療を経て49歳で第1子となる女児を出産した。

(取材・文/諸橋久美子)