誤解の多い「人工肛門」
ストーマは、大腸がんだけでなく、腸閉塞など消化器系の病気や子宮・卵巣など婦人科系の病気、交通事故による外傷など、さまざまな原因によって作られる。
一時的なものと永久的なものがあり、作る場所によって目的や排泄の状況も異なる。
「腸は、食べ物の消化吸収を行う小腸と、その後に水分を吸収する大腸に分けられます。小腸をお腹から出す『回腸ストーマ』は、大腸で水分が吸収される前の水っぽくちゃぽちゃぽした便が出て量も多いので、便廃棄のタイミングや処理が難しいです」
一方、大腸をお腹から出す「結腸ストーマ」は通常の便の状態に近く、比較的扱いやすいという。
「私のストーマは結腸ストーマ。大腸で水分が吸収されたあとの半固形の便が出るので捨てる際も処理しやすいです。便廃棄のタイミングもつかみやすく、慣れた今はそれほど不便を感じていません」
気になるのは、お風呂やパウチの交換、トイレなど日頃のケアについて。
「パウチは粘着力が強く、お腹の皮膚にしっかりくっつくので、お風呂にもそのまま入れますし、人目さえ気にしなければ温泉だって入れます。
もちろん、においが漏れる心配もありません。便を捨てる際は、パウチの下にある排出口を使います。パウチの交換は私の場合、週2回程度。粘着部に専用の薬剤をつけて取り外し、そのときにストーマもきれいに洗います。
普段はパウチの中で便にまみれ、息苦しそうにしている梅干しのような腸の先端を優しく洗ってあげると、とても気持ちよさそうに見えますね(笑)」
便は、通常のトイレに流すこともできるが、できれば汚物洗浄台やカウンター、汚物ボックスがついたオストメイト(ストーマをつくった人のことをこう呼ぶ)用の設備を使えると便利だ。
「駅などの公共施設にあるバリアフリートイレには設置されていることがあります。出かける際は、専用トイレの場所をチェックすることが多いですね」
人工肛門というと、その語感から肛門に蛇口のようなものをつけるとか、間違った認識やネガティブなイメージを持つ人も多い。
「重い病気や事故などで、突然ストーマになった人は、ショックで受け入れられないケースも多いんです。
若い人はなおさらですね。性行為のときにどこまで見せるか悩んだり、パウチが相手の肌に触れないように配慮するためテープで留めたり。そもそも抵抗を感じて行為自体できなくなってしまう人もいます」
とはいえ、実際はメリットのほうが多いと佐々木さん。
「私も最初は嫌で早く閉じたかったのですが、ストーマに切り替えて2年に及ぶ排便障害の苦しみから解放され、以前の生活を取り戻すことができた今は感謝しかありません。
手術で肛門の温存に成功した人も、ひどい排便障害に悩んでいるなら、永久ストーマという選択肢もぜひ視野に入れてみては」