ひざをたたくだけで若返りホルモンが

 中村先生は以前から、「健康の要は骨」と位置づける。実際、近年の研究によって、健康における骨の重要さが裏づけられつつある。

「私が医学部で学んでいたころは、骨に関して血液を作り出す部位であることくらいはわかっていたものの、“身体の軸”というイメージが大きかったんです。

 しかし、最近の研究によって、骨をつくるための骨芽細胞には、免疫力を高めたり、さまざまな臓器の機能をコントロールしたりする重要なホルモンを分泌する働きがあることが明らかになってきました」

 その中でも、今、注目されているのがスーパーホルモンとも呼ばれる「オステオカルシン」。

「オステオカルシンは“骨ホルモン”とも呼ばれており、血管を通って身体の隅々まで運ばれ、心臓や肝臓、腎臓、膵臓、腸など多くの臓器に働きかけます。

 その結果、全身の機能をトータル的に向上させ、肥満症や糖尿病認知症、動脈硬化などの予防や改善など、幅広い効果が期待されています」

“ひざたたき”で若返りホルモン『オステオカルシン』の分泌が約20%もアップ!
“ひざたたき”で若返りホルモン『オステオカルシン』の分泌が約20%もアップ!
【グラフ】“ひざたたき”を実践したら若返りホルモンが20%もアップ!

 骨芽細胞によって骨をつくり、オステオカルシンの働きを享受するためには、骨に刺激を与えることが大切。

「骨を丈夫にするためにはいくつかの指令が必要で、そのひとつが骨への刺激です。骨は刺激を受けると丈夫になろうとして新陳代謝が活発になるんです」

 そのための方法として中村先生が提唱しているのが「ひざたたき」だ。

「ひざをトントンと軽くたたき、骨に震動を与える程度の刺激だけで骨芽細胞が活性化してオステオカルシンをはじめとする“若返りホルモン”が増えます。一番大切なのは、繰り返し、毎日続けるということです」

 ひざをたたくことは、ひざ下の大きな骨に効率的に刺激を与えられること、さらにいつでも気軽にできることが大きなメリットとしてあげられると中村先生。

 ある調査によると、OECD参加20か国のうち、1日に座っている時間は日本人が一番長いことが判明。

「座っている間は下半身の大きな筋肉をほとんど使わないため、血流や代謝が低下し、肥満や生活習慣病、心疾患や脳梗塞のリスクが高まるといわれています。

 将来の健康のためにも、座っている時間のうち1分でも2分でもいいので、ひざたたきの時間に置き換えられるといいですね」

日本人は1日に平均7時間も座っている!
日本人は1日に平均7時間も座っている!