「オカンは勘弁してください」
なお、ガーシーのような暴露芸は基本、長続きしない。
かつて『芸能界 本日モ反省ノ色ナシ』(1985年)を皮切りに3冊の暴露本を出したダン池田もそうだった。『NHK紅白歌合戦』でもおなじみの人気指揮者だったが、ベストセラーで得た大金と引き換えに仕事を失うハメに。
こういう暴露芸はネタの濃さもインパクトも、最初がピークで、あとは枯渇していく。綾野が「人を信頼する気持ちをズタズタにされた」とも語っているように、暴露が一種の裏切りである以上、協力者もなかなか現れず、たとえ現れてもちょっとタチが悪かったりする。
その枯渇を補おうと、表現方法が過激になるのもよくあるパターンだ。ガーシーも“論破王”のひろゆきに対し、
「俺と違って奥さんいるからね。アキレス腱あるからあいつは。そこ攻められたらあいつは終わってまうから絶対に」
という攻め方をした。ところが、逮捕前、警察が自分の実家を家宅捜索した際には、
「ホンマにもう、うちのオカンは勘弁してください。関係ないでしょ。頼むからオカンは勘弁してくださいよ。本当に」
と、泣きながら訴える動画を投稿。相手の身内を攻めながら自分の身内は守ろうとする矛盾をひろゆきに突かれ、多くの人から「ブーメラン」だと指摘されてしまった。
それに、暴露ネタをスルーすることでほぼ無傷だった人もいる。結局のところ、暴露芸は負け組がするイメージが強く、そこから勝ち組になった人もいないのだ。
そもそも、暴露が面白がられるのは、その対象が人気者である場合のみ。また、暴露に至る心理の根っこには、売れた人への嫉妬もある。芸能人なら暴露するよりされる側であれ、というのが、ガーシー騒動という現代の寓話が示す教訓かもしれない。
ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。