「ケアマネジャーさんに相談し続け、やっとの思いで施設に入れることになりましたが、老健は3か月ごとに更新があり、またすぐに次を探さなくてはなりません。月に1回の家族会で情報を仕入れて、手当たり次第に空きを調べて。6年間、ケガや風邪で入院したとき以外は老健をはしごしていました」
子育てと介護が重なっていたこともあり、精神的にも経済的にも苦労は続いた。
「義母にイライラすることもありましたが、“これは病気のせい”と自分に言い聞かせたり、4つ数えて気持ちを落ち着かせました。頭で思うだけではなく、口に出すといいんです」
最期のとき、義母は認知症だったとは思えないほどしっかりと感謝を伝えてくれたという。
「私の手を撫でて『ゆみちゃんありがとう』と言ってくれました。湯原さんも『おふくろもわかっていたんだよ』とねぎらってくれました」
現在、荒木さんは、国内外で介護経験についての講演活動をしている。介護は大変だったがその経験が大きな力になっているのだという。
「介護中に湯原さんがちゃんと話を聞いてくれて、全面的に私の味方をしてくれたことは救いになりました。だから奥さんが介護中の男性には、何があっても奥さんについてあげてね、と言いたいですね。今、介護中の人は、何があっても下を向いちゃダメ。おしゃれをしたり、友達とお茶に行ってお話ししたりして、リフレッシュしてほしい」
と、語った。
(取材・文/野中真規子)