「日本では極めて稀な例ですが、非嫡出子などの中に無戸籍の人がいます。そういったケースだと主張して、生活のためにわざわざ戸籍をとったのではないか」(同・弁護士)
“なりすまし”は年金収入だけでは暮らしていけない年配の生活困窮者の「生きる術」だったのかもしれない−−。
千鶴容疑者は働き者だったという。
「働く意欲が満々でね。バイクの免許をとってからは、しょっちゅう夜にバイクにまたがって、現場へ出かけていましたから。千葉あたりまでも行っていたみたい。たぶん、バイクを買ったのは、交通費を節約するためでしょう。頭が下がる思いですよ」
千鶴容疑者の人となりを知るべく、勤務していた警備会社に問い合わせた。
勤務先に伝えていたのは、48歳妹の名前
「ちょうど1年前、“岩田樹亞”という名前で採用しています」(警備会社広報担当者、以下同)
やはり“妹”になりしまして履歴書を渡していた。48歳に見えたかという問いには、
「見えないからといっても“本当ですか”“ウソですよね?”と問い詰めることなんてできないですよ」
警備会社も千鶴容疑者の被害にあったわけであるが、
「年齢詐称の部分だけで、実害はまったくない。遅刻や無断欠勤などなく、千鶴容疑者は何も問題なく、きちんと勤務していましたので」
前出の近隣住民も容疑者たちに同情的で、
「他人を傷つけたというような、凶悪な犯罪ではない。素直に罪を認めれば、罰金刑程度で済むのではないか。早く自白して、ここへ帰ってきてほしい。戻ってきたら、温かく迎えてあげたいね」
容疑者夫婦の一軒家の窓には、主人の帰りを待ちわびている猫のシルエットが透けて見えた。