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ー 視聴者も求めるのは“混乱の渋谷”

 10月31日のハロウィン本番を控えた週末、多くの若者や外国人観光客でごった返した東京・渋谷の街。連日にわたって現場取材に当たっていたテレビ局のクルーたちだが、どうやら“期待通り”の光景とはいかなかったようでーー。

 日本でハロウィンが定着した2000年代より仮装をする若者、また国内外から見物客が訪れる聖地となったスクランブル交差点をはじめとした渋谷駅周辺。ところが2010年代後半より問題視されてきたのが、たびたびハロウィンに乗じて繰り返された過激な迷惑行為の数々。

 象徴とされたのが2018年、路上に停まっていた軽トラックを数人の若者が取り囲み、横転させては勝ち誇ったように車体に乗り出した姿。暴力行為法違反(集団的器物損壊)の疑いで逮捕者も出た“事件”の様子は動画や写真で収められ、毎年のようにニュースや情報番組、ワイドショーで放送されている。

 そして今年、3年ぶりに迎えた行動規制もない渋谷ハロウィンだが、渋谷区は「ハロウィン目的の来訪自粛」を呼びかけ、駅周辺での路上飲酒を禁止する措置をとることに。

 そんな“聖地”の現状を伝えようと、各局がこぞって番組内で渋谷の様子を中継映像で連日にわたって放送し続けている、のだが……。

「正直なところ肩透かし、というか焦ってます」と苦笑いするのは、テレビ局から委託されて数日にわたって“張り込み”取材をしている制作会社スタッフ。

 区の度重なる呼びかけや、メディアが報じた甲斐あってか、ハロウィン規制が敷かれた週末の街には仮装者の姿はほとんどなく、若者による“バカ騒ぎ”も見かけられなかったようだ。治安が守られた意味では万々歳なのだが、

視聴者も求めるのは“混乱の渋谷”

渋谷駅前にはハロウィン規制が敷かれ、一部箇所は入れなくなっている
渋谷駅前にはハロウィン規制が敷かれ、一部箇所は入れなくなっている

いや、その“(バカ騒ぎの)画を撮って来い”と、ディレクターから暗にプレッシャーをかけられて探し回っているんです。何も起こらない渋谷を映しても数字は取れないとの判断なんでしょうね」

 どうやらテレビマンから求められているのは“平穏な渋谷”ではなく、何が起きるかわからない、誰もが見たくなるような、視聴率が稼げそうなハラハラした“混乱の渋谷”のようだ。

 そんな渋谷ハロウィンに通じるのが、18年ぶりのセ・リーグ優勝で大阪・ミナミの街が歓喜した阪神タイガース。ここでもテレビが期待していたのはバカ騒ぎする阪神ファン、そして制止を振り切って道頓堀川に飛び込むような“道頓堀ダイブ”の画だったとか。

「なんだかんだで視聴者が求めるのも露出が多い派手な仮装女性や、好き勝手に騒いで暴れる、さらに警察と揉めたりトラブルを起こすような若者の姿。テレビの前で“またバカやってるよ”“どうしようもないな”などと、呆れて文句を言えるような画。それを抑えるまで撤収できませんね(苦笑)。

 もう、ハロウィンブームも“下火”ということなでしょうか……、あっ、ごめんなさい。なんか(新宿)歌舞伎町が熱いらしいんで、そっちに行ってきます!」

 10月31日に“本番”を迎える渋谷ハロウィン、期待されるような画は撮れないのかもしれない。