“介護はホラー以上”読者から切実な声が
こかじさんは、自身の介護体験記を本にまとめたが、読書感想サイトには“介護はタイヘンどころじゃなく、ホラーよりコワイのが現実”、“親にお金と人生を搾取されている”など切実な書き込みがあるという。
“子が老親の面倒を見るのは当たり前”“お年寄りを大事にしましょう”などというきれいごとではすまない現実があると、こかじさんは語る。
「育ててもらった親に恩返しはしたいですよ。父が蛍狩りに連れて行ってくれたり、母が運動会でお重いっぱいのお弁当を作ってくれたり、いい思い出もたくさん。私も“搾取されている”とまでは思っていません。
でも介護で消耗する日々が続けば続くほど、いい思い出も浸食されていってしまうんだと思います」
こかじさんの友人は、介護ヘルパーに「実際に介護をした人はお葬式で泣かないものよ」と言われたそう。
「病気などで若くして親を亡くした人は“もう少し親孝行したかった”と言う。でも介護を5年、10年と続けた友人は、親が亡くなると皆“正直ほっとした”と言います。
私自身も、彼らから解放されるその日を指折り数えてしまっていますが、罰は当たらないと思ってます」
また、老いていく親を見て、否応なしに考えさせられるのが「自分はどう老いるか」という問題。子が気づいたときには財産管理もできなくなっていたというケースは特に深刻だ。
「親世代は、モノはたくさんあるほうが豊かで便利という価値観だったかもしれません。でも今は私も、財産も含め身辺はすっきりさせておこう、と切実に思います」
昨年には叔父が、今年3月には叔母も自活が難しくなり、こかじさんの手配で同じ介護付き老人ホームに入居。それが可能だったのは、貯金に加え、終身の個人年金に加入していたことが大きい。
「4人の自宅介護が続けばストレスでこっちが先に死んでしまうと戦々恐々だったので、まずは2人を身近で世話しなくてよくなり心底ほっとしました」
ストレス解消にはプチ家出・ソロ活を
叔母夫婦が老人ホームに入居したとはいえ、こかじさんの介護生活はまだまだ続く。
「介護は長期戦。ストレスから身を守るために、腹が立ったらその場を離れるようにしています。実兄に相談した上で、親にだまって温泉地に1週間ほど家出したりもしますよ」
介護中は友人と会うのもままならないという人も多いだろう。その場合は「ソロでも楽しめる時間や趣味を持つのもおすすめ」だそう。
こかじさん自身の趣味は走ること。今もマラソン大会に向けて走り込んでいるとか。
「走ると気持ちが整理されるし、汗をかいてシャワーを浴びるとイライラもすっきりと洗い流せます。介護が頭から離れる日はないけれど、4人を残して私が先に逝くわけにはいかないな……という思いはあるので、心身共に健康でいれたらと」
取材・文/志賀桂子