認知症の影響から夜這いやセクハラ
認知症の影響から夜這いやセクハラをする、物を盗られたと騒いだり、反対に盗んで部屋に隠す、勝手に外に出てしまうといった事件を起こすこともザラだという。
「『80代の女性介護職員が90歳の利用者さんからセクハラを受けて困っている』といった話が相談窓口に寄せられたことも。何歳になっても異性間、ともすると同性間のセクハラも存在します。私も、認知症の男性入居者が満面の笑みで別の認知症の女性入居者の胸をもんでいるのを見たことがあります。ご家族に話すと『猥談なんてしたこともない、まじめなおじいちゃんが!』と驚かれていました。入居者が職員に対して行うセクハラは厚生労働省のマニュアルに沿って対応しますが、入居者同士、特に加害者の認知機能が落ちている場合は注意しても覚えていないと言われるので、対応が難しいです」(Tさん)
また、職員がセクハラの加害者側ということもある。
「『グループホームの72歳の男性職員が入居者女性にセクハラをした』といった訴えもありました。高齢の女性は世代的にも被害を口にしにくいようですし、職員に嫌われて世話をしてくれなくなったらという不安もあるようです」
今回、認知症が原因と疑われるトラブル事例を上部で紹介している(協力:ケアきょうなど)。
「職員が最も恐れているのは、転倒事故につながるものです。高齢者は一度骨折してしまうと、寝たきりになる可能性も高いですし、入居者さんご家族から責められ、大きなクレームになることも」(Tさん)
入居者間のトラブル防止のために、職員もさまざまな工夫をしている。
「入居者同士の性交渉は禁止されているケースもあり、関わりを減らすために男性と女性の席を近づけないなどの工夫をしている施設もあります」(向笠さん)
それでも職員の目をかいくぐり、男女の仲になって相手の部屋に通ったり、夫婦で入居しているにもかかわらず、不倫に走る猛者もいるという。
女性同士の人間関係もやっかいだ。施設で出会って意気投合し、人生最後の親友をつくる人もいる。反面、施設内で複数の派閥ができ、時に対立してしまうことがある。
「都心の高級老人ホームでは夫の給料や役職、海外旅行にはどこへ、何回行ったなどの話題で、マウントの取り合いになることもあります」(向笠さん)