デジタルといえど、納骨先は変わらない

 土地の制約や管理、跡継ぎなど、お墓にまつわる問題を解決してくれる一手として注目を集めているのが“デジタル霊園”“デジタル墓”と呼ばれる新たなお墓のかたち。コロナ禍を機に、お墓やお葬式、法要などのデジタル化が導入され始めたのだ。

自宅に置ける小さなお墓。二次元コードを読み取ると、故人の写真や動画が再生されるスマートシニア株式会社のサービス。(PRTIMESより)
自宅に置ける小さなお墓。二次元コードを読み取ると、故人の写真や動画が再生されるスマートシニア株式会社のサービス。(PRTIMESより)
【写真】お墓に2次元コード!? スマホで読取り、故人の写真の記録が見られるサービス

「ネット上にお墓をつくることで土地代や墓石代、管理代が浮き、例えば海外に住んでいてもネット空間にお墓があればいつでもお参りができるといったものです。

 ですが、ネット空間に遺骨を置くことはできませんし、法律で納骨をできる場所というのは許可を受けた墓地や霊園と決まっている。お墓自体はネット空間にあったとしても、骨は納骨堂に納めるなど従来の選択をとることになります」

 納骨堂に遺骨を納め、墓石を建てない代わりにネット空間につくる……。つまり、納骨堂や樹木葬のオプションとして、デジタル霊園があると考えたほうがいいという。

「デジタル化という点でいうと、墓石に二次元コードをつけて追悼サイトを見るといったサービスもあります。スマホで読み取ると、故人の写真や年表、肉声などが保存された追悼サイトが出てくるのです。

 ほかにも、ネットにある故人を偲ぶサイトを見られる二次元コードと写真立てを組み合わせた、仏壇よりもコンパクトな自宅に置けるタイプのデジタル墓もあります」

墓石や樹木葬のプレートに二次元コードを追加し、故人の歴史を記録してお墓参りの際に閲覧するスマートシニア株式会社のサービス(PR TIMESより)
墓石や樹木葬のプレートに二次元コードを追加し、故人の歴史を記録してお墓参りの際に閲覧するスマートシニア株式会社のサービス(PR TIMESより)

 また、コロナ禍を機にお盆の法要や年忌法要をデジタルで行うお寺なども出てきたが、デジタル霊園よりも、デジタル法要のほうが需要はあるのではと吉川さんは言う。

「先祖代々のお墓に集まろうにも仕事が忙しく地方に行けない、身体を悪くしてお寺まで行くのが難しい……という問題を解決してくれるだけでなく、情報配信ツールとして積極的に活用する寺院も多いと思います」

 今後、ますます高齢化に拍車がかかり、それに伴い遺骨も増えていく。管理や維持を簡素化するためにも、従来にはない“新たな遺骨の行き先”も必要なのかもしれない。

吉川美津子さん●葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタント。大手葬儀社、大手仏壇・墓石販売店勤務を経て、葬送コンサルタントとして活躍。著書に『葬儀業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』など。
吉川美津子さん●葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタント。大手葬儀社、大手仏壇・墓石販売店勤務を経て、葬送コンサルタントとして活躍。著書に『葬儀業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』など。
教えてくれたのは……吉川美津子さん●葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタント。大手葬儀社、大手仏壇・墓石販売店勤務を経て、葬送コンサルタントとして活躍。著書に葬儀業界の動向とカラクリがよ~くわかる本など。