かつて、漫画やアニメは子どもだけのものとされ、1990年前後には宮崎勤事件によって世間から忌避されたりもした。しかし、彼女のようなアイドルがその魅力を発信、いじめやひきこもりでつらい時期もそれによって救われた話などをすることで、社会的認知度が上がり、より多くの人が楽しめる趣味に変わっていく。
「大人になったなぁ」
また、彼女も含めたアイドルの活動年数が大幅に延び、老若男女に愛される存在となっていった。いわば「推し文化」の定着にひと役買ったのである。そんな彼女の最新の仕事は、アニメ『16bitセンセーション』(BS11ほか)の主題歌『65535』。イラストレーターのヒロインがタイムスリップして、ゲームの歴史を変えようとする物語だ。
ヒロインは過去の世界で「美少女キャラでいっぱいになる」未来を予言するが、今の日本はまさにそういう状況。それは中川のような「可愛いもの」を愛するオタクが導いたものでもある。
とはいえ、その担い手は今後、より若い世代に移っていくことだろう。前出の動画チャンネルで彼女は、申請の手続きが大変だったことに触れ、
「オトナになったなぁと感じましたね。運転免許取ったとき以来に。10代から芸能界にいさせてもらってると、わかってないこと多いんですよ」
と、振り返った。
改名を機に、オトナのオタクとしての人生が始まるのかもしれない。
宝泉薫(ほうせん・かおる) アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。