さらに、楽天市場などネットのショッピングモールでも「鹿肉」と検索すると、たくさんの商品が出てくる。
ガイドラインを守っていない「闇ルート肉」も
しかも、中には100グラム100円台の商品も。鹿は有害鳥獣だから安いのだろうか。
「いえ、そういうわけではないんです。“正規ルート”の鹿肉は、一般的な豚肉や鶏肉よりむしろ高いことのほうが多いです」
鹿はたしかに有害鳥獣だが、だからといって安いわけではない。鹿肉などは、豚肉や鶏肉のように大量生産、大量流通できないので、どうしても高コストになってしまうのだ。
たしかにスーパーや道の駅では100グラム500~700円ほどで販売されているものが多い。なぜインターネットでは安く売られているのか。
「ネット上で売られているものの中には国が定めたガイドラインを守って解体している処理施設が出荷したものではない肉が、少なからずあると思います。それらはいわば、闇ルートの肉といえます」
正規の食肉処理施設の肉とそうでない肉で一番違うのは安全性だ。
「野生動物を肉にするためには皮をはいで内臓を出し、食肉用に切り分けるといった作業が必要になります。正規の食肉処理施設では、ガイドラインにのっとり、安全性を重視した方法で解体されます。
一方、例えば昔ながらの猟師さんですと、鉄砲で仕留めた場でお腹を切り、内臓を取り出すこともあります。その際、万一、肛門から排泄物が出て肉に付着すると多少洗ったくらいでは大腸菌は取りきれません。正規の処理施設ではそういうことが起きないよう、十分に配慮して解体しています」
猟師の中には国がガイドラインを定めたことを知らないために、以前から行っている方法で処理して、地域の料理店やネットのショッピングモールに出している人もいるという。
「ガイドラインをもっと普及させる必要があるでしょう。たしかにその場で解体したほうが新鮮かもしれませんが、『新鮮だから安全』というわけではありません。安全に食べてもらうためにも、ぜひ正規ルートの肉を食べていただきたいと思っています」