【10】ヒロインを女性が描く新たな試み
脚本の大石静と主演の吉高由里子に、制作統括チーフプロデューサー、チーフ演出のいずれも女性で、この主要4役を女性が務めるのは大河ドラマ史上初となる。
「これまでの大河は男性が求めるヒロイン像という部分が強くあった。作り手が男性だらけなので、女性からするとどうしても“それ違うんじゃない”となってしまう。けれど『光る君へ』は女性が描く女性の物語。男性が求める女性像ではない、女性たちで作る女性像という信頼感がある。そこはこれまでの女性主人公の大河にはないものでしょう」
女性が作る女性のドラマで大河の低迷脱却を図る。しかしそこにはこんな懸念も──。
「『どうする家康』と同様に、従来の大河ドラマのファンとは違う層を明らかに狙っている。それにより従来の大河ドラマファン、いわゆる合戦シーンが好きな人は脱落するでしょう。ただ大石さんの力量からすると、『どうする家康』ほど脱落者は出ないのでは。
今回の大河は戦ものではなく、文化的な方向に一度シフトして、様子見をしながら感がある。新たな鉱脈を探しているところがある。『光る君へ』にしても、文化好き、文学好きには刺さりそうだし、新しい大河になるのを期待したいですね」
お話しを伺ったのは……田幸和歌子さん●1973年長野県生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌・web等で俳優・脚本家・プロデューサーなどのインタビューを手がけるほか、ドラマコラムをさまざまな媒体で執筆中。エンタメ記事は毎日2本程度執筆。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。
(取材・文/小野寺悦子)