新たな治療、家族を思って決意した手術
死を待つだけなのかと絶望している中、彩乃さんは、医師からとある提案を受ける。
「“人工肛門をつけて、ご飯が食べれる様になって体力が戻ったら、ダメ元で抗がん剤治療してみますか?”と提案されました」
人工肛門への戸惑い。ダメ元と言われながらも試す抗がん剤治療。しかし、彼女は手術をすることで病気を治す手段につながるのならと手術を決意する。
「人工肛門になって体力が戻ったとしても、抗がん剤が、効くかわからない。もしかしたら、逆に命を縮めるかもしれない。不安ばかりで押し潰されそうでした。でも、何もしないで死を待つのは嫌。できることがあるのなら、なんでもしたいと思いました。夫と娘と離れたくない。その想いが私を強くしてくれました」
横行結腸がんのため、食事をとることが難しく、体力の回復が見込めないため、人工肛門への切り替えを提案された彩乃さん。まだ生きたい、家族でもっと一緒の時間を過ごしたい一心で、手術を決意し、人工肛門の手術を終える。すると徐々に体力が回復し、抗がん剤治療を始められるまでに復調した。
「当初は寝たきりで、歩けなかったのが、リハビリで無事歩けるまで回復しました。抗がん剤も3クール目まで順調に進むことができました。でも4クール目で抗がん剤が効かなくなったんです」
つらい抗がん剤治療を乗り越えるも、肝臓のがんが拡大し、閉塞性胆嚢炎《※》も発症。そこで、閉塞性胆嚢炎の手術をする事になる。《※右上腹部痛や心窩部痛、あるいは右背部痛などに加え、悪寒戦慄、発熱などがある。黄疽を呈することが多い。なかには、急にショック症状や乏尿や腎障害、さらに意識障害を呈するものもある(東京都立病院機構より引用)》
「術後、医師から話されたのは、“このまま、黄疸の数値が高ければ、抗がん剤治療が出来ない”ということでした。
どうにか生き残ることはできないのか、その思いで病気を調べていくと、黄疸の数値が下がったら分子標的治療《※》があることわかりました。
私はすぐにでも分子標的治療をはじめたかったので、専門の病院へと転院し、セカンドオピニオンをすることにしました。しかし、セカンドオピニオンの結果は“分子標的治療の効果がでなければ、余命1か月”という宣告でした」
《※分子標的治療とは、がん遺伝子により産生されるタンパク質などを標的として、その働きを抑えたり、「がん周囲の環境を整える因子」を標的にして、がん細胞が増殖しにくい環境を整える治療法(特定非営利活動法人日本肺癌学会より引用)》
しかし、余命1か月を宣告されても彼女は今、前向きに治療を続けている。
「黄疸の数値が少し下がったので、このまま下がる事を期待しながら、分子標的治療を開始しました。
分子標的治療の副作用は、下痢、脱毛、脱力感などたくさんありますが特に肌の荒れを感じます。肌を清潔に保ち、保湿をしっかりしないと、すぐに荒れてしまう。副作用はつらいけれど、家族と会えなくなってしまうことの方がもっとつらいので、諦めずに続けています」