自分の生活を犠牲にして共倒れしないように

 親の人生の最終段階に、家族はどのように向き合えばいいのか。向き合い方を誤ると、親を苦しめることになりかねないので注意したい。

「夫婦2人で住む高齢の両親に対し、遠方で暮らす子どもが、『病院や施設に入らず、家でお互い支えてほしい』と言ってしまうケースが見られます。

 それは、老老介護の負担も考えずに、『病院や施設にいるより、家のほうがいいに決まっている』などとする無意識な押しつけです。その発言が、親にとっては重い負担になることも。

 『家が良い』と言うなら口だけでなく身体も動かし、親をサポートすべきではないでしょうか。もしくはお金を出すのでもいいと思います。意見と労力またはお金はセットで提供することを心がけましょう」

 逆のケースも見られるという。高齢の父親が妻を自宅で介護すると宣言したとき、子どもが「お父さんには絶対に無理」などと決めつけてしまう例だ。

「実際には、YouTubeなどを見て料理や家事をこなす高齢のお父様もいらっしゃいます。最初から無理と決めつけたりせずに、見守ってあげてください」

 親が病気を患ったら、介護などに時間を要するようになる。それが短期なのか長期なのかによっても家族の向き合い方は変わってくる。

「短期の代表例はがんの終末期です。一見元気そうに見えても、余命1か月などと残された時間が短いケースは少なくありません。その際、在宅医療を願うなら、早く行動に移すことが望ましい。

 退院するか迷っていると、動ける時期を逃してしまうからです。がんに限らずですが、家族は『今どんな段階にいて、この先どうなるか』という病状の理解に努め、行動を後押しするなど密にサポートしていくのが好ましいでしょう」

 一方、認知症など長期の介護を必要とする場合は、一定の距離を保ち仕事などと両立することが大切になる。

「自分の生活を犠牲にしてまで長期の介護にあたると、行き詰まって破綻となりかねません。私は介護の講演に呼ばれた際には必ず、『支えるご家族が、介護のために仕事を辞めるのは避けてください』と伝えています。

 自宅で過ごしたいという親の思いに応えるのには在宅医療をはじめさまざまな手段がありますし、介護保険サービスを利用すれば仕事との両立は可能です。支える側の家族の人生も大切にしてほしいのです」

病気の種類や進行度により身体の衰えは異なる。医師に相談し、「今はどういう段階なのか」を正しく理解することが大切。
病気の種類や進行度により身体の衰えは異なる。医師に相談し、「今はどういう段階なのか」を正しく理解することが大切。
【グラフ】末期がん、心臓病、認知症患者の「医療・療養を受けたい場所」と「最期を迎えたい場所」