しかしその後、日本のテレビ局ではコンプライアンスが重視されるように。その波に押されるように、電撃ネットワークは海外で活動を始め、各地で高い評価を得るようになる。なお、今回の南部さんの訃報は、オーストラリアやカナダのニュースサイトでも報道されたという。
南部さんが見つけた人は、ほぼブレイクする
2016年 には新メンバーのオーディションを行い、500名を超える応募者の中から3名が選出された。今日元気さんはその映えあるメンバーのひとりだ。だが今回、とんでもない事実が発覚した。
今日元気さん(以下・今日)「南部さんと知り合ったのは、10年ほど前ですね。当時の僕は海上自衛隊を辞めて上京して、舞台役者を始めたところでした。その後、知り合いが主催した食事会の席でお会いした際に、『明日もまたここに来て』って言われて。
次の日到着したら、南部さんが先に来ていて待っていて、まあまあ座れ、と。『君は台本を読んでいるタイプじゃないよね』と言いながら、机の下から(電撃ネットワークのユニフォームである)赤いつなぎを出して、渡してくれたんです。『うわっ、映画で師範が黒帯渡すシーンみたいだな』って、ちょっと感動しましたね。もちろん断るわけないですし」
ダンナ「え! オーディションに応募してきた中から南部ちゃんが選んだんじゃないの!? 応募してきた元気が、『メンバーにしてください』って毎日南部ちゃんのところにやってきて、その熱意から……、って言っていたけど。決まっていたんならやらせじゃん!(笑)南部ちゃん、そのこと墓場まで持っていくつもりだったんだな(笑)」
今日「あ、実は、そう、僕が合格するって、(南部さんと)話がついていて……。オーディションの参加者が少なかったみたいで……、そういえば『内緒な』って言われて……。でも、あとの2人(ランディー・ヲ様とリチャード・ジョーダン)はオーディションで選んだと思います!おそらく!」
こんなエピソードも、南部さんの審美眼と面倒見のよさにつながるのかもしれない。
ダンナ「確かに南部ちゃんは、気になった人には自分から声をかけて、つながるタイプでした。そんな人たちを南部ちゃん主催のイベントに誘うんです。南部ちゃんが見つけた人は、ほぼブレイクするんですよ。はるな愛さん、サンドウィッチマンの2人、狩野英孝さん……。エスパー伊東さんもそう。名前が売れるようにいろんな人を紹介してあげたりするから、みんな感謝していましたよね」
今日「僕は……。10年くらい一緒にいたんですけど、褒められたことがなかったですね。会っても説教、仕事終わりは飲み屋で僕だけ呼ばれて説教、翌日は電話で説教……みたいな。前もネタの話で『こう振ってきたらどう落とす?』と聞かれて『こうします』って答えたら、いざステージに上がったときに僕が答えたそのやり取りをそのまんま南部さんがやっちゃって。わぁそれ使うんかい、って。
今考えると、それを使ってくれたことで、心の中で褒められた、って思うしかないと言うか。なんかあると僕に連絡してくるんですよ。『これやって』か、説教。(倒れた)あの日も、3時間前に電話していましたからね。
南部さんからいつもみたいに連絡が来て、明日地方の現場まで行くのに天気はどうだ、とか。だからその後奥さんから『お父さん(南部さん)が倒れた』って連絡が来て、『え、どういうこと?』って。結局、ちゃんと褒めてくれなかった」