石橋の勢いと木梨の器用さ

 帝京高校で野球部だった石橋とサッカー部だった木梨による「とんねるず」は当初「部活芸」などとも評されたが、長年、人気コンビとして活躍した。『みなおか』のヒット企画『仮面ノリダー』でチビノリダーを演じた子役・伊藤淳史もいまや40歳のオジサンで、放送中の主演ドラマでは不倫される夫の役をやっている。絶頂期からかれこれ30数年なのだ。

 とんねるずの成功は、石橋の勢いと木梨の器用さとの相乗効果によるところが大きい。生放送中にカメラを壊すという初期の武勇伝は石橋のケガの功名、初期のヒット曲『雨の西麻布』が演歌のパロディーとして成立したのは木梨の歌唱力のたまものだ。その後も、石橋がハリウッド映画で大役を射止めたりしたのに対し、木梨は画家としての実績などをコツコツと積み上げていった。

 高校時代の教師たちも石橋について「とにかくひょうきんで目立つムードメーカー」、木梨については「絵がうまかったこと以外はあまり印象がない」と証言している。

 なお、人生は恋愛や結婚にもかなり左右される。石橋は最初の妻と離婚した翌月に、鈴木とできちゃった再婚。一方、木梨は安田と8年交際の末、周囲からの反対を乗り越えて結婚した。勢い余ってという生き方を加速させた石橋と、器用な生き方を家庭込みで設計できた木梨、ということもできる。

 実際、木梨は妻について「俺に関わるすべてのことをプロデュースしてくれる」「迷っている時に正解をくれる人」と絶賛。不動産管理による財テクはもとより、個展に出す作品選びまで、その意見に従っているという。

 妻を人生のルールブックにするような姿勢は、世の女性ウケにもつながりやすい。そんなところも含め、木梨は批判されにくい芸人のひとりだが、それは何かとやんちゃな石橋のおかげでもあるだろう。結果的に、相方が弾よけになっているわけだ。

 勢いが売りの人は転びやすいし、失速するとつらい。その点、器用な人はそこそこつぶしが利くし、飄々としたマイペースな感じが加齢とともに味にもなるのである。

ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。