小倉のオープニングトークは台本には記されない。スタッフにも事前に知らされない。“間”も含めて自分の言葉でノーカットで語られる小倉節は、視聴者の気持ちを揺さぶった。テーマは政治ネタから街で拾ったエピソードまで多岐にわたった。
下(しも)の話はイメージが悪くなると忠告された
自身が患った病気のことまで、赤裸々に語った。2016年に膀胱がんが見つかると、番組内で公表。'18年に膀胱を全摘出し、代用膀胱造設術を受けたことも告白した。
「見つかった時点で全摘しなさいって言われたんです。だけど男性機能を失いたくないという未練があって、2年間遠回りした。いろいろ調べて、お金も使い、結果的には周辺の前立腺や精嚢も含めて全摘しました。勃起神経は切ったけれども、射精神経は残っているから、ピクッ、ピクッていう男ならわかる快感は覚えるんです。
ただ、精子はつくれないから、ピュッと出たのがおしっこだったりするわけですよ(笑)。そういうことは医師も知らないから、泌尿器の学会に呼ばれて講演したこともあった」
下(しも)の話はイメージが悪くなると忠告するスタッフもいた。しかし、膀胱がん患者の情報が少ないと感じていた小倉は、自分がしゃべることに意味があると考えた。
「例えば排尿の大変さだとか、みんな話したがらないんです。だけど、男だって高齢になれば尿漏れパッドを使う人は結構いるんです。それなのに、なんで男性用トイレにはサニタリーボックスが置いてないのかと声高に言っていたら、高速道路のサービスエリアとか、サニタリーボックスがある男性用トイレは少しずつ増えてきましたよ」
'21年、小倉にとって大きな出来事が3つ重なった。『とくダネ!』の終了、コロナ禍、そして、がんの転移である。見つかった肺がんはステージ4の診断。
「抗がん剤は効かなかったんだけれども、キイトルーダという免疫チェックポイント阻害薬が劇的に働いて肺がんは消えたんです。ところが1年ほどして急激に副作用が出て、死にかけた。病院に駆けつけた女房は、土気色の顔をして震えている僕を見て、覚悟したそうです」
死の淵からは戻ったものの、腎臓の機能は著しく低下。昨年末には赤ワインのような血尿が出て、精密検査をすると左の腎臓に影があった。
「腎盂がんの疑いがあって、陰茎の先から管を通して調べたんですけれども、はっきりしたことはわからなかった。ただ、もしも腎盂がんなら進行が早く、右の腎臓に転移したら余命が短くなるから、左の腎臓を摘出することになったんです。
摘出した臓器を病理検査したら、腎臓をかたどっている筋肉層全体を木の根が張るようにがん組織が覆っていて、非常にタチが悪い、と。僕の場合、キイトルーダで肺がんは消えましたから、最後に残された手段として、またキイトルーダを使うことになりました」