“KAZU”からの言葉が励みに
こうした飛び抜けた行動力は、時に「出る杭」と見なされ、衝突を生むこともあると認める。だが、
「オリンピックの会場などに行くと、世界のフリーのカメラマンは、指定された場所では撮りません。人とかぶらない写真を撮るために、常に会場サイドと交渉している。日本では異端に思われるかもしれないけど、世界では当たり前なんです」
そんな小中村さんの精神に共鳴する有名アスリートは多く、インタビューなど試合中以外の撮影を頼まれることも多い。
小学生のころからサッカーを続けていたという小中村さんにとって、特別に思い入れがある選手が、三浦知良選手だという。
「'15年に行われた『阪神・淡路大震災20年1・17チャリティーマッチ』で、KAZUさんを撮影できたことは忘れられません。『たった1センチでもいいから前に進めばいいんだよ』とKAZUさんにかけられた言葉は、今も励みになっています」
小中村さんには、まだまだ成し遂げたいことがあるという。
「現在、パラ卓球のオフィシャルカメラマンを務めているのですが、パラスポーツの魅力や選手たちの姿を伝えていきたいです。
そして、原点でもある競走馬の撮影も、ずっと心に秘めているものがあります。そのためにも、私は世界でもっと戦えるカメラマンにならないといけない」
紆余曲折を経て見つけた、自分が「好き」なもの。情熱があれば、壁は飛び越えられると笑う。
小中村政一(こなかむら・まさかず)●1979年、兵庫県生まれ。MLB(メジャーリーグ)、FIFA(国際サッカー連盟)、USGA(全米ゴルフ協会)の3団体の主催試合を撮影してきた、世界でも数少ないフリーカメラマン。多岐にわたるスポーツを撮影する
取材・文/我妻弘崇 撮影/小中村政一