脳の機能が変化してしまう

 では、ギャンブル依存症になりやすいのは、どういった人なのだろうか。

「海外では、子どものころにカジノや競馬場に行った経験があると、ギャンブル依存のリスクを高めるという報告があります。大人がギャンブル場に子どもを連れていかないことや、教育現場でギャンブル依存症について教えることも大切です」

 ギャンブル依存症になると、脳の機能に変化が起こるという。最初はギャンブルを行うと報酬系と呼ばれる脳の回路によって、ドーパミンという快楽物質が大量に出るが、ギャンブルを繰り返すうちにこの回路が鈍感になり、やがてドーパミンがあまり出なくなってしまう。すると、ギャンブルをしても満足できなくなり、その結果、ますますギャンブルがエスカレートしていくのだ。

ギャンブル依存症は本人の意識や性格の問題ではなく、脳の変化によって起こるので、本人ひとりだけで解決することは難しいです」

 本人が依存を自覚してギャンブルを完全にやめることはもちろん大事だが、借金のことは弁護士に相談したり、同じ依存症の人が集まる自助グループに参加したりすることも有効だという。

「また、最近ですと思考や行動のパターンを見直す認知行動療法がギャンブル依存症の治療にも取り入れられるようになってきました。医師などの専門家や患者たちで話し合い、ギャンブルをしたくなったときの対処法などについて考えていきます。そのなかで、自分はなぜギャンブルがしたくなるのか、どういうケースなら我慢できるのかなど、自分の考え方や行動パターンを見直して修正していきます。

 ただ、依存症には反復性があり、制御しようとしても再びその行動を取り戻そうとする性質があるため、こういった治療を行っても些細なきっかけで再びギャンブルをしてしまうことがあります。しかし、それは本人の意識の問題ではないので、もし再発したとしても、あきらめずに再び治療を始めることがとても重要です」

 薬をのめば治る病気とは違い、ひと筋縄ではいかないギャンブル依存症。長い闘いになることも多いのだ。

 球団は水原氏を解雇したことは認めたが、解雇の理由についてはいまだ詳しいことは明らかにしていない。本当にギャンブル依存症なのか、続報が待たれる。