和式トイレは尿を「自然に」出しやすい作りになっているが、洋式トイレではそれがしづらいそう。
「身体の構造上、洋式の座り方だと膀胱側に腹圧がかかりやすい。だから、尿を出すときは自律神経の働きにより、自然に出るまで待ったほうがいいんです。忙しくても、おしっこが出る1~2分を惜しまないでほしいです(笑)」
妊娠経験がある方は誰でも骨盤臓器脱になるリスクが
直腸が出てしまう直腸瘤も排便習慣が影響している。
「特に便秘がちの人、便が硬い人は排便のときに強くいきみ、腹圧を強くかけると臓器を押し下げてしまうんです」
なお、骨盤臓器脱は、妊娠や出産経験があると、なりやすいというデータがある。
「妊娠により骨盤底筋は大きなダメージを受けるので、妊娠経験がある方は誰でも骨盤臓器脱になるリスクがあるといえます。特に2回以上経膣分娩をしている方は高リスク。また、純粋な子宮脱に関しては遺伝が影響します。母親がそうであれば、娘にも起きる可能性が高い。その人がもともと持っている骨盤底筋のコラーゲンの強さなども関係しているようです」
命に関わるものではないが、こすれた臓器が感染症を起こしやすくなったり、排便や排尿がしづらいなど、生活の質に大きく影響するため、放置は禁物だ。
「外に出た臓器を中に押し戻してくれるクッション付きのショーツがあります。これは膣口が開いた状態で、単に押し込むだけという感じなので『下がってくる感じが気になる』『たまに出る』程度の比較的軽めの方向きです」
子宮の中に「ペッサリー」という器具を入れて、下がってきた臓器を膣内に押しとどめる方法もある(下図参照)。
「子宮の中に入れれば膣の入り口は閉じるので、症状によってはこちらのほうがおすすめです。まず受診して合うサイズを決め、その後は1~3か月ごとに受診して洗浄や着脱をする必要があります」
違和感が気になるときは、出てきた臓器を指で押し込んでもいい。むしろ出しっぱなしにしないことが大切だ。
「触るときは清潔な手で。性生活も戻した状態で普通にして大丈夫。膣の出口が開いている状態に慣れると元に戻りづらくなり、重症の場合は一時的に押し戻してもすぐ出てきてしまいます」
根本から治すには、手術が推奨されている。現在は、膣を縫い留めたり、弱った膣壁をメッシュで補強したり、下垂した臓器を仙骨に縫い留める手術が主だ。
「手術を膣から行うか、お腹から行うか、方法も2種類あります。日常生活に支障がある際は検討を。どの手術を選ぶかは、患者さんの症状やライフスタイルを見て相談しながら決めることが多いです」
子宮脱は病院選びにもポイントがあるそう。
「泌尿器科や婦人科ならどこでも大丈夫ですが、産婦人科だとお産で混み合っている病院も。婦人科に特化していたり、泌尿器科と婦人科を合わせた『ウロギネ科』がベストです。ホームページに骨盤臓器脱の記載があれば、その分野に力を入れていることが多いので、チェックしてみて」
意識して鍛えることで予防したり、何かしら症状がある人も進行抑制はできる。
「最も手軽なのは、座るときに両膝をきちっと閉じること。これだけで骨盤底筋の筋トレになります。それと、1か月に5kg以上落とすようなダイエットは骨盤底筋をやせさせてしまうのでNGです」
毎日を快適に過ごすため、「あれ?」と思ったら、予防や治療に取り組もう。
二宮典子先生 二宮レディースクリニック院長。診療は婦人科、泌尿器科を中心に女性の健康を幅広くサポート。性にまつわる相談しにくい困り事などについて解説するYouTubeチャンネルも人気。