一人だからこそ健康でいなければ
健康でいなければ、という危機感にも似た思いが強いのは一人暮らしゆえ。11年前、夫を長い闘病生活ののち見送った。義理の両親、父も看取り、母は現在、介護施設に入居している。
「コロナ以前は一緒に食事に行ったり、交流もできていたんですが、面会もできなかったコロナ禍を経て、認知症の症状が進んでしまいました。今は月に2回ほど、面会に行っています。さみしくもありますが、プロにお任せしたほうが安心ですし」
夫の闘病生活は長く、入院生活も5年にわたった。
「最初に肺がんを患い、手術がうまくいって数年後に完解したんですが、そのうち腎臓が悪くなり始めてしまって。入院生活が3年目に入ったあたりでドクターから『もう完治は望めません』と言われました。
本人は治ると信じていたんですが、正常圧水頭症や腎不全なども併発してしまい、どんどん悪くなっていくのを私はただ見守ることしかできなくて」
夫の病気が判明した時、松田さんは45歳。28歳から始めた料理教室も盛況、料理番組への出演やレシピ本の執筆など多忙を極めていた。
「自分の仕事は午後2時までとか決めて、仕事のあと病院に行っていました。大変なこともありましたが、仕事もあったから乗り切れたようにも思います。原稿を書くことは病室でもできますしね」
夫が他界し、終活を意識した数年前、それまでの住まいを整理し、引っ越しを決めた。新居は大きな公園の目の前。
「緑豊かな公園で、犬のお散歩をしている人も多いんです。せっかく公園の前に住んでるんだから、私も犬を飼いたいなぁと思って」
実は松田さんは大の犬好き。長らく犬との生活に恋い焦がれていたが、3年前に知り合いから紹介してもらい、念願の犬を迎えることに。今は朝晩の散歩で1日1万歩も歩くんだとか。