来日して半世紀が過ぎた。活躍して稼いだお金は、5つもの保育園をつくるなど祖国スリランカのために役立てた。
「今もスリランカとの交流はあります。日本各地で行われる『スリランカフェスティバル』で、スリランカの魅力を伝えています。近々だと5月18、19日に千葉県鎌ヶ谷市で行われるので、ぜひ遊びに来てください」
そう言って、目の前の昆布茶をごくりと飲む。「昆布茶、大好きなんです」。その姿は、すっかり日本に溶け込んでいる。
「私が来日するとき、母は『あなたはもうスリランカには戻ってこない』と予言めいたことを言ったのですが当たりました。母が寂しくならないように私は国籍を取得しなかったけど、自分は心から日本人だと思っています。
この年になっても働けるのは、私を必要としてくれる人がいるから。英語を学びたいという生徒さんの情熱が、私にパワーをくれる。自分で歩けるうちは英会話を教え続けたい。貧乏暇なしなんです(笑)」
アントン・ウィッキー●1936年、セイロン(現スリランカ)生まれ。セイロン政府水産庁に勤務後、来日し東京大学農学部大学院で博士号を取得。『ズームイン!!朝!』の「ワンポイント英会話」コーナーを1993年まで15年間担当し、絶大な人気を集めた。6月15、16日に東京・代々木公園で行われる「第16回スリランカフェスティバル2024」にも出演。
取材・文/我妻弘崇