同時代を生きた芸能界も太鼓判
氷河期は今なお続くと、せんだはちゃめっ気たっぷりに笑い飛ばす。しかし、昭和の時代に視聴率や聴取率を稼ぎまくったせんだの“地力”には、同時代を生きた芸能界の仲間たちが、こぞって太鼓判を押す。
今年2月24日。せんだは神奈川県秦野市のクアーズテック秦野カルチャーホールで開催されたコンサート『昭和歌謡黄金時代』の司会を務めていた。出演者は湯原昌幸、ビリーバンバンの菅原進、タレントの夏木ゆたか。本番前の楽屋を訪ねると、自らも名司会者として活躍している夏木がこう述べた。
「せんださんから学ぶものは……何もないです(笑)。何もないけれども、僕はせんださんの大ファンだし、彼は司会者として関東が誇る第一人者ですよ。あの人ね、本気で司会をやらせたら、季節感を織り交ぜたり、お客さんの反応を見たりしながら、素晴らしいMCができる人なんですよ。だけど、自分も目立ちたいからすぐに“ナハ、ナハ!”とか始まっちゃうでしょ。そういう意味では司会者の枠に収まっていられない根っからのエンターテイナーなんですよね」
ステージの幕が上がると、せんだが登場。昭和歌謡を楽しみに来ている観客の年齢層は高い。そこに向けて、せんだの絶妙なトークが放たれた。
「去年の敬老の日に102歳のおばあちゃんと対談しました。とてもお元気なので、長生きの秘訣を尋ねたら、“お風呂だよ”と。なるほどなと思って、“どれくらい入っているの?”と聞くと、“1時間”って答えるんですよ。“それ、長すぎない? 大丈夫なんですか?”って聞き返したら、横にいたヘルパーさんがコソッと言いました、“着替えに50分かかります”って」
場内は大爆笑。だが、笑わせるだけでは終わらない。
「ヒートショックって知ってますか? 温度差で血圧が急激に上下すると心臓に負担がかかって、それで亡くなる人の数は交通事故死の3倍だそうです。一番危ないのはお風呂に入るとき。みなさん、寒い季節はあらかじめ脱衣所やお風呂場の空気を暖めておいて、くれぐれも温度差がないようにお気をつけください」
高齢者に配慮したせんだの話術。さらに、自らの体験もネタにして観客の懐に飛び込んでいく。
「芸能生活も50年を超え、私も後期高齢者です。実は一昨日、大学病院で認知症のテストを受けたら、“まだ5年くらい大丈夫です”と言われました。喜んでいいんでしょうか(笑)。
病院の先生が言うには、認知症になった男性が最後まで覚えているのは奥さんの顔と声なんだそうです。で、認知症になった女性が最初に忘れるのが、旦那さんの顔と声だそうです」
会場が再び笑いに包まれる。観客との距離が縮まれば、テレビでは話せないお得意の下ネタも飛び出す。
「みなさん、結婚当初のことを覚えていますか? ある男性の話ですが、新婚初夜の翌朝、独身時代の悲しい性が出て、奥さんの枕の下に2万円置いちゃったんです。“ヤバイ!”って狼狽していたら、奥さんが黙っておつりを5000円くれた」
笑いで観客の気持ちをほぐす。それがせんだの役目。会場の空気が十分に温まったところで、昭和歌謡のステージは始まった─。
本番前の楽屋で、出演者の菅原進はこう話していた。
「せんだのネタは全部知っているけれど、何度聞いても笑っちゃうからね。ステージで自由に話すせんだは、たけしさんやさんまさんよりも面白いと僕は思うよ」
菅原は、せんだとは高校時代からの仲である。その菅原の出番が来ると、司会者のせんだはこう述べることを忘れなかった。
「恩人です、彼のおかげで僕は芸能界に入れました─」