母、そして美輪明宏さんからいただいたもの
「若い子が私に会いに来るのは、そうですね、怖いもの見たさもあるんじゃないの」
そんなふうに、笑いながら自分を評してみせるカーリー。旧岩崎邸において、若いファンも多いのを改めて目の当たりにした。
そして若い子たちには一定の年齢層から上の方々の区別が厳密につかなくて、美輪様とカーリーが混ざる子もいるのではないか、とも思う。
仲のいい夫婦が似てくるように、御両人はなんとなく年々似てきているような。
美輪様がまだ姓を丸山と名乗っていたころ、お母様がシャンソン好きなのもあってファンだったが、カーリーは怖いと感じた。
そう、怖いもの見たさではなく、ただ怖い。遠い人だと憧れながらも、何か自分といろいろ共通するものも勘づいてしまったカーリー少年は、あまりにも美輪様が魅惑的で自分が激しくのめり込みそうで、いったん自分の中で封印した。
それがお母様が亡くなったころ、寂しいと思いながら街を歩いていたら、美輪様の舞台があるのを知ってしまう。今だ、と直感した。ここだ、と天啓に打たれた。
さっそく観に行き、封印を解き、通い詰めて覚えてもらうまでになる。そしてカーリーが本を出したりするようになったとき、推薦文などいただきに出向く。
そして、あの名言。宝石のような御言葉である。まさに枯れない言葉の花束。いや、唯一無二の、一輪の花か。弟子に心の準備ができれば師匠が現れるというのは、本当だ。美輪様も、待っていてくださったのだ。
カーリーが真摯な尊敬を捧げたから、美輪様も同じように返してくださったのだろう。
そして絶対に、お母様の引き合わせだ。
お腹の中が真っ白なパートナーと犬たちに支えられて
「私が美輪様のコンサートを観に行ったときに、美輪様が
『隣にお母様が来てたわよ』と教えてくれるときもありました」
その美輪様が、20年近く公私ともにカーリーを支えるパートナーを見て、「この人はお腹の中が真っ白ね」とおっしゃったとか。これも、その通りなのだろう。
かつて猫好きでも知られたカーリーが、いつの間にか犬好きになって、迫力ある大型犬や可愛い小型犬たちに囲まれているのも、犬好きのパートナーの影響だそうだ。愛犬たちの姿はSNSで見られ、犬好きを悶絶させている。
そんなカーリーは、豪邸を衝動買いするのでも知られているが、これも実は衝動買いではないのかもしれない。家のほうが、買ってもらえるよう待っていたのだ。
「鎌倉の家が1000坪、軽井沢の別荘が1300坪。それでもまだ足りない。
もっともっと、自分の庭を花でいっぱいにしたい。花まみれにして、古い材料で古民家風の建物や茶室もつくりたい。もっともっと、まだまだ。犬たちを自由に走り回らせるドッグランもつくりたい」
カーリーの動機や生き方は、実はシンプルでベーシック。好きなものが欲しい、美しいものに囲まれたい。でも、満足度は人それぞれだから、自分の城をいかに美しく居心地よくするかが大切だという。
「先行投資はしなきゃだめ。ケチるのもだめ。お金も循環させなきゃ、血流と同じで滞るのがよくない。あと、断捨離ってのもあるけど、要らないものは捨てて、大事な物はちゃんと取っておかないと。思い出も捨てちゃだめ」
カーリーは欲望に忠実だが、必ず分け与え、還元しようとする。そして日本人の多くも、震災などに遭った人に寄附をしようとするし、助けようとする。
「花は経済のバロメーターです。豊かな国は、花が人気商品。今の日本は、真っ先に花などの消費が削られている」
カーリーを見ていると、いや、見習えば日本は大丈夫、盛り返せるという気もしてくる。花の市場は不況でも、カーリーのイベントが活況を呈しているのだからまだ大丈夫とも思える。