引き取り手がないと故人の宝物もゴミに
旅行が趣味で乗車した列車の切符を大切に保管していた人、釣りの道具を並べていた人。そこに残るそれぞれの住人の生きた証しを見ると、無念さが強まると山村さん。なかには、十数万円で買い取りとなった立派な鉄道模型が残されていたこともあった。
お金に替えられるものがあれば買い取りに回し、保証会社への支払いに充てるなどできるが、それは稀なケース。ほとんどの遺品は引き取り手がなければゴミとして処分される。
「他人から見たらガラクタでも、本人にとっては宝物。生きる糧だったかもしれません。家族のものとおぼしき遺骨の骨壷が出てくることもありますが、こちらも“荷物”扱いされて処分対象。
さすがに、ゴミとしては扱えないので、お寺で合葬をしていただきますが、ちゃんと弔いたかっただろうなと思います」
一方、女性の部屋で多く見られるのは、大量の食品遺物。
「生活保護を受けていた76歳女性の部屋には、いたるところにレトルトカレーや即席のみそ汁、カップラーメンなど未開封の食品が山積みにされていました。どう考えてもひとりで食べ切れないような量で、すでに賞味期限が切れているものも。食べ物に囲まれることで安心感を得ていたのかもしれません」
逆に、物がなさすぎる“空虚”な部屋もあった。74歳男性の終のすみかには、最低限のものしかなかった。
「衣類は3着ほど、靴は2足。家具はテレビと小さな机くらい。何を楽しみに生きていたのだろうと、胸が詰まりました」
それでも、山村さんは孤独死につながるひとり暮らしを否定しているわけではない。
「“おひとりさま”を楽しむようなライフスタイルは、今の時代は特別なことではありません。ただ、孤独死の可能性を想定する必要があると思うのです」
自分が倒れたときに早く見つけてもらう、もし亡くなっても気づかれず放置されるのを防ぐため、コミュニティーを持つことが重要だと訴える。
「近所の人とあいさつをする程度でもいいので顔見知りになること。また、高齢の親のひとり暮らしの家の場合、室内にゴミが放置されていないか、外出はつっかけのような履き物だけで済ませていないか確認をしてください。
これらは、来客もなく、身なりを気にしなくなってきてもいる兆候なので、孤立した生活になっていないかどうかのバロメーターなのです」
取材・文/河端直子 画像提供/グッドサービス