京丹後の人たちは酪酸菌が多い

 日本は世界でトップクラスの長寿大国だが、その中でも長寿の町といわれるのが、京都府にある京丹後市。

 京都駅から特急で約2時間半かかる日本海側に位置するこの町は、もっとも長く生きた男性としてギネス記録になった故・木村次郎右衛門さんの出身地で、100歳以上の人が多いことで知られている。なんと、全国平均の3倍以上もの長寿の人がいるのだ。

 なぜ京丹後市には長生きの人が多いのか。その秘密を探るべく、京都府立医科大学は7年前から高齢者を対象に食事内容や睡眠時間、血液検査の結果など、600項目以上を調査し、15年間観察する「京丹後長寿コホート研究」に取り組んでいる。

 その項目のひとつが腸内細菌なのだ。

「私たちが京丹後の高齢者に協力してもらい、腸内細菌を調べたところ、ほかの地域と比べて特定の善玉菌が多いことがわかったのです」

 京丹後市の近くにある京都市と比べて、京丹後市の人に多かった腸内細菌は「酪酸菌」と呼ばれる種類だ。

 私たちの腸にいる善玉菌は、私たちが食べたものをエサにしていて、私たちの健康にいい物質をつくり出している。酪酸菌は酪酸という物質をつくる善玉菌のこと。

 これまで善玉菌というと、乳酸菌やビフィズス菌が取り上げられることが多かったが、近年注目されているのが酪酸菌だ。

 酪酸菌がつくり出す酪酸が増えると、大腸の壁の細胞の働きが活発になり、酸素が消費されて腸管に入らず、善玉菌が好む無酸素状態が保たれる。もし酪酸が少ないと腸管に酸素が入り、酸素があっても生きられる悪玉菌が増えてしまうのだ。

 実際、酪酸菌が多い京丹後の人たちは悪玉菌が少なかったという。