がんの最新治療も腸内環境次第
大腸がん以外のがんは、腸内環境とどういった関係があるのだろうか。
腸には多くの免疫細胞が集まっているため、腸内環境が乱れると全身の免疫機能が低下し、がん細胞を攻撃する力が弱くなってしまう。
そのため、大腸がんだけでなく、胃がんや膵臓(すいぞう)がん、さらに、腸とはつながっていない乳がんや肺がんなどにも影響があることがわかっている。
近年、腸内細菌と全身のがんとの関連を示すデータが続々と報告されているのだが、その中でも注目されているのが、がんの最新治療法との関係だ。
がんの新しい治療法である免疫療法は、患者の免疫細胞が、がん細胞を攻撃する力を高める治療法として、近年脚光を浴びている。ノーベル賞を受賞した本庶佑さんが開発に貢献した免疫チェックポイント阻害薬を使った治療が主ながん免疫療法だ。
男性の死亡数1位の肺がんをはじめ、全身のさまざまながんに対して期待の大きい治療法なのだが、実はこの薬を使っても2割程度の患者にしか効果がない。
なぜ、効く人と効かない人がいるのか、何がどう違うのか、世界中の研究者が理由を探っているところだが、その理由のひとつに腸が関係しているのでは、という研究が2022年に発表された。
順天堂大学や明治ホールディングスなどの研究によって、特定の乳酸菌がつくり出す物質が免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を高める可能性があることがわかったのだ。
さらに、薬の効果を高める可能性のある新種の腸内細菌が、国立がん研究センターのグループによって世界で初めて発見された。現在、その菌の働きを薬にする研究を国の援助を受けて行っているところだという。
がんの新薬が効果を発揮できるかどうかも腸が関係していたとは、驚きの事実ではないだろうか。
免疫力アップやお肌の健康につながるといわれて腸活がブームになって久しいが、がんとの関係で改めて世界中の注目を集めている腸内環境。がん対策のためにも、ぜひ、腸活をがんばりたい。