今年の4月クールに放送された『不適切にもほどがある!』(TBS系)の劇中で取り上げられ再び脚光を浴びた『金曜日の妻たちへ』のように話題作も多い不倫ドラマだが、近年はその内容がますます過激になっている。
中でも増えているのは、今年1月クールに伊藤淳史が浮気された“サレ夫”を演じ、不貞をはたらいた妻に復讐すべく奮闘する姿が話題となった『離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』(テレビ朝日系)に代表されるリベンジ系不倫ドラマだ。
この7月クールを見ても、松本まりかが夫に浮気された“サレ妻”を演じる『夫の家庭を壊すまで』(テレビ東京系)や、吉谷彩子が妹に夫を寝取られた“サレ妻”に扮する『どうか私より不幸でいてください』(日本テレビ系)などが放送中。増えているワケは一体何なのか?
リベンジ系不倫ドラマ増加、なぜ?
「'80年代は“金妻”だったり、'90年代に入ると冬彦さんブームを巻き起こした『ずっとあなたが好きだった』(TBS系)のように、不倫ドラマは昔から普遍のテーマとしてあり続けています。それが今の過激なリベンジ系ドラマの流れになる転換点となったのが、'17年に放送された『奪い愛、冬』(テレビ朝日系)からではないでしょうか」
こう話してくれたのは、ドラマウオッチャーで漫画家のカトリーヌあやこさん。この作品の登場以降、不倫ドラマは二極化してきたのではと分析する。
「『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(フジテレビ系)や『失楽園』(日本テレビ系)もそうですが、それまでの不倫ドラマって夫では満たされなかった心の隙間を不倫相手が埋めてくれて、許されざる行為だからこそ盛り上がるみたいな、どこかヒロインに寄り添うような不倫ドラマが主流だったんです。
それが鈴木おさむさんが脚本を手がけた『奪い合い、冬』の登場でその流れが一変。特に印象的だったのが、部屋で倉科カナさんと大谷亮平さんが不倫関係になるんですが突然、大谷さんの妻役の水野美紀さんがクローゼットから飛び出してきて『ここにいるよ!』って叫ぶんです。
もうホラーというか1周回ってコントですよ(笑)。こういったシーンがSNSでバズったりしてネットを意識した過激な作品が増え始め、サレ妻のリベンジ系につながる不倫ドラマが作られるようになったんです」(カトリーヌさん、以下同)
'20年に世間を騒がせた2大不倫報道以降の世間の風潮も、サレ妻系ドラマが増えてきた要因になったのではとカトリーヌさん。
「東出昌大さんとアンジャッシュの渡部建さんの不倫が相次いで発覚。コロナ禍もあってみんながよりネットを見るようになり、SNS上でこういう“男たちには罰を与えよう”とばかりに激しく叩くようになったのがこのころですよね。
『半沢直樹』(TBS系)じゃないですけど、不倫=巨悪は絶対に許さないみたいなカタルシスがSNS上に蔓延するようになりました。しかも、『半沢直樹』では土下座をすれば解決するけど、不倫はそれすら許さないみたいな(笑)。
そういった風潮もあり、サレ妻が浮気したダメ夫にリベンジする姿は痛快に感じたり共感する人も増え、放送を見ながらSNSでも盛り上がれるからサレ妻系が話題になってきた。ある意味、サレ妻系のリベンジ不倫ドラマが増えてきたのは、東出さんと渡部さんのおかげかもしれません(笑)」
今年配信がスタートした韓国ドラマ『わたしの夫と結婚して』(Amazonプライム)が人気となるなど、勢いの止まらないサレ妻系不倫ドラマ。今後も増えていくのだろうか。
「サレ妻系もそうですが、最近の不倫ドラマのヒロインって、心が病んでいる“メンヘラ女子”が多いんですよ(笑)。
そんな今の時代を反映したようなキャラクターを主人公に据えることで、サレ妻系のように過激な設定や極端な演出ができるからホラーにもなるしコントにもできる。汎用性が高いから作り手の方も手が出しやすいんだと思います。不倫ドラマのエンタメ化といいますか、そういった流れは今後も続くのではないでしょうか」