「存続の危機にある歴史地区」
大谷ファンにとって新たな“巡礼地”となったリトルトーキョー。日系の移民が多く住むアメリカ最大の日本人街で、今年で誕生140周年という長い歴史を持つが、深刻な問題を抱えている。
「アメリカの非営利団体『歴史保護ナショナル・トラスト』が5月にリトルトーキョーを“存続の危機にある歴史地区”に指定しました。バブル期は日本人観光客が多く訪れてにぎわっていましたが、バブル崩壊とともに観光客は減少。日系ではない企業や人口が増える一方、閉店を余儀なくされる日系の商店が目立っています」(在米ジャーナリスト)
どういったことがリトルトーキョーの存続を脅かしているのか。『ナショナル・トラスト』に確認したところ、
「リトルトーキョーの多くの老舗企業は、家賃の高騰や経営者の高齢化、全国チェーン店の流入により危機に瀕しています。ほとんどの企業が賃貸物件を借りているため、家賃高騰の影響を強く受けてしまいます。再開発などにより、文化や経済が変えられてしまっているのが現状です」
受け継がれてきた日系のレガシーが失われつつある。そこに現れたのが大谷だった。
リトルトーキョーの伝統を守り、活性化に取り組む『リトルトーキョー・コミュニティ協議会』によれば、大谷の存在は大きいようだ。
「日本人観光客や日本メディアのリトルトーキョーへの関心が高くなり、ドジャースがホームゲームのときは、ユニフォームを着た日本人観光客が多く訪れるようになりました。大谷選手はドジャースに移籍してきたばかりですが、大きな影響を与えています」
リトルトーキョーで30年以上もラーメン店を営む『ミスターラーメン』の店員に話を聞くと、大谷への感謝を語った。
「ホームゲームのときは、ここでごはんを食べて球場に向かったり、深夜1時まで営業しているので試合後に来店してくれる人も多いです。日本人だけでなく、アメリカ人のお客さまもいらっしゃいますし、日系人も多いです。日本人である大谷選手があれほど活躍して、誇りですよね。売り上げも昨年までと大きく変わってくると思います。本当に、大谷選手さまさまです。大谷選手にも一度、リトルトーキョーに来てほしいですね」
異国の地で、大谷が先人たちの伝統と文化を守る救世主となりそうだ。