ちなみに、「しまむら」そのものは、男性の育児参加に前向きだ。本社所在地である埼玉県が運営する「働き方改革ポータルサイト」では、2017年度の事例として、社内報で育休取得した男性社員を紹介するなどの取り組みが紹介されている。

 ここでは経営者のメッセージとして、当時の社長による「男性・女性にかかわらず全社員が『安心して・楽しく・長く』働くことのできる環境の整備を進めています」といったコメントも掲載されている。

(出所:「株式会社しまむら 働き方改革ポータルサイト」より)
(出所:「株式会社しまむら 働き方改革ポータルサイト」より)
【写真】「ママがいい」「パパは全然面倒見てくれない」靴下

 そんな、しまむらグループのバースデイが、なぜ「炎上不可避」の商材を扱ってしまったのか。そこには、ブランド特有の事情が考えられる。謝罪をめぐる反応を見るとわかるように、インスタグラムにおける「しまむらコミュニティー」は、他のSNSとは若干異なる。そこにヒントがあるのではないか。

 しまむらを一躍ファストファッション大手に導いた要因のひとつに「しまパト」がある。「しまむらパトロール」の略で、店頭に並んでいる掘り出し物を見つけて、SNS投稿することを指し、企業も公式に使っているフレーズだ。これがインスタグラムを中心に広がり、コスパ志向の風潮と「映え」、そして宝探しのゲーム要素が掛け合わさって、しまむら人気の原動力となった。

 しかしながら、そうしたインスタ偏重の考え方が、世間とのギャップを生んでしまった可能性はないか。

 バースデイの公式インスタグラムの投稿動画では、今回のコラボ商品が「ユーモアあふれるデザイン」「かわいらしいフレーズ」と紹介されていた。謝罪投稿に並ぶ擁護コメントを見ても、「映え」や「エモさ」に寄り過ぎた結果、炎上に至った印象が拭えないのだ。

比較的、迅速な対応ではあった

 しまむらグループは、SNS時代を背景に成長してきたからこそ、炎上は避けなくてはならなかったし、そのセンサーを持っておくべきだった。Xで多く言及されていた「なぜ企画が通ったのか」といった疑問は、筆者も同感だ。アパレル業界屈指の大企業で、このような企画が通ってしまうことに、強い違和感を覚えてしまう。

 とはいえ、発売翌日に中止を決めたのは、全国展開するチェーン店としては比較的迅速だったと言える。バースデイは324店舗(2024年2月期末)を展開しており、各商品を店頭から回収するとなると、かなりの労力と損失が発生するだろう。