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ー メダル獲得後に電話が
“初老ジャパン”の長老・大岩義明。今年で48歳だ

「大変、光栄に思っています。われわれはマイナースポーツですから、とにかく認知してもらうことが大事」

 自らを“長老”と名乗り、記者会見でこう語っていた馬術日本代表の大岩義明(48)。パリ五輪の総合馬術団体で銅メダルを獲得。馬術において日本のメダル獲得は、実に92年ぶり。悲願を達成したチームの平均年齢は41・5歳で、自らを“初老ジャパン”と名乗っている。

 冒頭で大岩が語ったのは、“初老ジャパン”と呼ばれることについて、どう思うのかという質問への回答。

「いいネーミングだなと思っています(笑)。私もですが、もう1回、頑張ろうって思ってくれる人が増えてくれれば」

 そう笑いながら話すのは、愛知県『犬山乗馬クラブ』代表で、小学校から高校まで大岩と同じ乗馬クラブで技を磨いたという元馬術日本代表の森本健史さん。

 今回メダルを獲得した総合馬術は、馬を正確かつ美しく運動させる馬場馬術(ばばばじゅつ)、クロスカントリー、障害馬術という3つの種目を、1人と1頭の馬が3日間にわたって行う競技。団体戦では、1チーム3人で構成され、減点合計の少ないチームが上位となる。

 “初老ジャパン”は7月29日に種目最終日を迎えたが、メンバーの北島隆三の馬が馬体検査を通過できず、20点が減点された。これにより日本は3位から5位に転落するも、底力を発揮して、入賞を果たした。

マイナースポーツということもあり、以前は日本と海外では、そうとうなレベルの違いがありました。しかし、今回メダルを獲得した馬術チームは、みんなヨーロッパを拠点にトレーニングを積んできたことで、そのレベル差が縮まったのだと思います。

 海外では、自宅の庭で馬を飼っている家もあるぐらい、馬が身近な存在。だから、競技人口も多く、それだけ才能のある選手も出てきやすいのです」(森本さん、以下同)

 48歳で、チーム最年長となる大岩だが、五輪はこれまで5大会――つまり20年にわたって出場してきた。どんな人物なのだろうか?

「昔から今も変わらないですが、明るくてみんなに好かれる人ですね。馬に乗るときに足をかける“あぶみ”を外して、馬にまたがるトレーニングがあるんですけど、それは本当にきつかった。けれど彼は、苦しい姿を見せず、トレーニングをしていましたね」

メダル獲得後に電話が

 こんな思い出話も明かす。

「合宿に行ったとき、2人で練習をサボって遊びに行ったことがありました。楽しかったのですが、その後、先生にはめちゃくちゃ怒られましたね(笑)。大学時代の馬術部ではキャプテンだったはずですから、今回のチームでも中心的な存在になったのではないかと思います」

 大学を卒業した大岩は、就職したことで一時競技から離れている。しかし、2000年のシドニー五輪を見て、再び競技に復帰する。

「諦めかけていたものを、環境を整えて、もう一度挑戦するというのは、そうとうな覚悟が必要だったと思います。なにより競技を続けていくことも大変だったはず。海外から帰国した際に“あと何回、大会に出られるかな”と話していたことがありました。馬術とは、体力もかなり必要になりますから」

 メダル獲得時に、祝福メッセージを送ったところ、大岩から森本さんに電話がかかってきたという。

「本当によくやってくれた、おめでとうと伝えてから“次に愛知県に帰ってきたときには手羽先を食べに行こうな”と話しました。毎回、彼が来たら一緒に食べに行っているので、楽しみです」

 地元グルメに舌鼓を打ちながら、今回の土産話はいっそう盛り上がりそうだ。